第7話 これからは天国の理奈のために歌う

 天国の神様、理奈は天国で悩みも不安も執着もなく、幸せに暮らしています。

 これからずっと、理奈をお守り下さい。

 そしていずれは、あと二十年後もすれば、私も天国の理奈の元へと旅立ちます。

 それまで、私はこの混迷の世の中で生き続けます。

 現在はマスメディアには出ないことにしていますが、クリスマスディナーショーでは、なんと五万五千円のチケットが三か月も前に完売したんですよ。

 これも昔からのファンのおかげですね。


 私は理奈の実現できなかった大学進学を果たしました。

 通信制ですが、四年で無事卒業したんですよ。

 これが私の理奈にできる、唯一の子供孝行かな。


 その後、なぜか私の歌声は、なぜか理奈に似てきたわ。

 まるで理奈の声がのり移ったみたいに、高音もでるようになった。

 天国にいる理奈からのプレゼントに違いない。


 今の私には今までのような、ファンタジックな恋の歌などもう歌えやしない。

 この歌は、理奈がいるという安心感の元でこそ、歌えることができたということに、気がついたの。

 これからは、理奈への供養、そして神への賛美を歌うつもり。

 神の愛が人類へと届き、もう若者の自殺などという悲しいことが起りませんように。


 私は今、繁華街の片隅でアカペラで、天国の理奈に響かせるためにゴスペルを歌っている。

 そこにはスター時代だったカクテルライトに照らされることもなく、華やかな声援もない。

 あるのは、悲しみに満ちた、ときには虚ろな目で見つめる視線があるだけだ。

 なかには、私と同じ、身内を自殺で亡くした人も混じっているのかもしれない。

 しかし、ゴスペルが一曲歌い終えるたびに、なぜか光を見出したような晴れやかな表情にかわっていく。

 神の恵みが光のように、照らされたのでしょう。

 ゴスペルのあるところには、天使が飛ぶというが本当ですね。

 今の私は神の伝道者に変身しました。

 いずれは、天国で理奈とゴスペルをデュエットできるその日まで。


     完


 

 

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元ビッグアイドルきよこの変身人生 すどう零 @kisamatuma

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