第10話 魔法とやら
朝起きて俺はふと思った。
魔法使いたい、と。
だって、魔法を使えるようになれば、前みたいに重い鉄剣を振り回すことなく魔物を倒せるようになる。あれはまじでしんどかった。
つまり魔法習得=省エネとなるのだ。
よし、出かける準備をしよう。
―――俺は、『ミミック』から少し離れたところにある図書館に来ている。
ここは、以前街を散策した際に発見した。一度行ってみたいと密かに思っていたのだ。それは、俺は本が好きだからだ。
本はいい、著者の人生が、考え方が、そこに表れる。たかが数時間で己の知見を広げることができるのは省エネにとって嬉しいことだ。
俺は魔導者コーナーへ行き、棚から『魔法入門』というタイトルの本を手に取り、借りる手続きをした。
以前昼寝をした草むらに座って『魔法入門』を読み始めた。
俺に読めるのか不安だったが、なぜか魔法の構造式がスラスラと頭に入ってくる。
どれ、ちょっと試してみるか。
俺は立ち上がって開けた場所に移動した。
ちょうどいい岩がある。これに風が斬撃を与えるイメージで…
《かまいたち》と唱えると、
俺の手の先から風が刃状に飛び出し、岩を斬りつけた。
おお、こんな感じか。これは剣を使うよりかなり楽になるな。俺もしかして才能ある……?
―――『魔法入門』に書かれている魔法を色々と試してみたが、結局うまく使えたのは「かまいたち」「火球」「治癒」だけだった。
俺の魔力量ではそれぞれ2発ずつが限界だ。全然才能なんてなかった……。
ちなみに、「火球」を試す時に詠唱をミスって手を火傷した。下手に成功して木や草に当たらなくてよかったと思う。
で、それを治すために
「治癒」を試したら上手くいったというわけだ。
魔法の扱いには気をつけよう。
まあ、この3種類を習得できただけでも、俺の戦闘はかなり楽になるだろうし、まずはこれらをもっと上手く使えるようになろう。
ひとまず俺の魔法実験は終了だ。
習得した魔法を実践で試したいと思い、クエストを探しにギルドに来た。
お、これちょうどいいかも。
『ランク:E 内容:ゴブリンを5体討伐する。報酬:2000G』
討伐の証拠にゴブリンの一部を持ち帰らなきゃいけないらしい。面倒だが難易度はちょうどいいしこれにしよう。
「クエストの受注、承りました。頑張ってくださいね!」
前回と同様に受付を済ませる。
そして、俺はゴブリンが生息する森林へ向かった。
―――ゴブリンは、前回スライムがいたのとは別の森林に生息している。
スライムに比べて、攻撃力も体力もゴブリンは上回っているため、前回より気を引き締める必要がある。
ちなみに、装備が前回の冒険でボロボロになったため一新した。前回と全く同じものだ。
武器屋の店員に1日で防具が使い物にならなくなったことを伝えたら大笑いされた。くそう。
「お、いたな。」
森林を進んでいると、少し開けたところにゴブリンが3体いるのが見えた。
この距離なら、「かまいたち」を使うのが良さそうだ。もっとも、「火球」なんて使ってしまったら森林ごと火事になっちまうしな。
《かまいたち》
俺はそう唱えると、3体ともに命中し倒すことができた。これは、想像以上に強力だ……
魔法は省エネ界の革命だな。
俺は残りの2体も討伐し、ギルドへの報告を終えた後、宿に帰り夕食も取らずに眠った。
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