第11話 パーティ結成
それから俺は、日々多くのクエストをこなしていった。気づけば冒険者ランクがCになっていた。
魔法はかなり上達したと自分では思う。剣は長らく握ってないから鈍っているだろうが……。
今日も俺はギルドでクエストを吟味している。
ランクがCになったことで、受注できるクエストの幅が大きく広がった。難易度の高いものもちらほらあり、そういうクエストは冒険者どうしでパーティを組んで行うのが一般的なようだ。
俺はまだパーティを組んだことがない。足手まといになるのを恐れていたからだ。
しかし、魔法の扱いに慣れてきた今ならある程度周りについていくことができるかもしれない。
また、パーティを組むことで戦闘を分業でき、省エネにつながる。
以上の理由から、俺は『ランク:C 内容:シャドーウルフを5体討伐し、牙を回収する。報酬:30000G
※PT推奨。』というクエストがパーティを組んでクリアを目指す上でちょうど良いのではないかと思った。よし、そうと決まれば早速メンバー探しだ。
今、ギルド内には大勢の冒険者がいる。
本当は大声でパーティメンバー募集を呼びかけるのが1番良いのだが、生憎と俺は陰キャなのでそれができない。それと、エネルギーを極力使いたくない。
再びギルド内を見渡してみると、隅の方でいかにも初心者そうな4人の男女が輪になって話し合っている。もしあの4人と俺で5人パーティを組むことができれば、クエストを攻略するのもそう難しくはないだろう。
よし、と意気込んで俺は4人に近寄って声をかけた。
「すみません。俺とパーティを組んでもらえませんか?」
いきなりすぎたかな、4人は少し驚いた表情だ。
4人は互いに目を合わせ頷き合っている。
やがて、2人の男性のうちの若い方が口を開いた。
「少し場所を変えよう。君とじっくり話がしたい。」
ということで俺たちは、以前俺が1人で行った看板娘がバニーガールのファミレスへ移動した。ちなみにこの店を提案したのは俺ではない。4人は頻繁にこの店を訪れるらしい。ここ、結構有名なのかな。
席につくなり、若い男性が言った。
「じゃあ、まずこちら側の自己紹介をしようか。僕はレイン、剣が得意だ。この4人の中でのリーダーをしているよ。」
レインは爽やかさの塊のような男だ。多分結構モテる。
「俺はロック、防御が得意だ。」
なかなか渋い声だな、ロック。
「私はシスタ。魔法が得意です!」
シスタは俺と同い年くらいに見える。顔がめっちゃタイプ。
「あたしはリンツ。短剣が得意だよ。」
リンツは可愛いというより美人系の顔立ちで、褐色の肌をしている。
なるほど、聞いたところではこの4人のバランスはかなり良く、役割分担ができている。しかも全員Cランクのようだ。心強い。
俺も軽く自己紹介をした。
「俺はトオルです。元は別の世界にいたんですけど、気がついたらこの世界に転移していました。
それからずっと単独でクエストをこなし続けてきました。簡単な魔法ならある程度使えます。」
異世界転移は滅多にないことなのか、4人は目を丸くして驚いている。
「そんなことが本当にあるのか・・・」
「ずっと1人でだなんて、私なら寂しいです。」
「あたしは1人でも楽勝かなー」
「見栄を張るな、リンツ。」
「ロックうっさい!」
思えば異世界で自分のことを話したり、こんな風に他人と交わるのはこれが初めてだ。他人と関わるのも悪くない。
そして、俺たち5人はしばらく話し込んだ。俺がパーティを組みたいと思った経緯や、4人のこれまでの冒険譚なんかを。聞けば、4人もランク昇格を目指すにあたって新しいメンバーを迎えようと考えていたらしい。
長い時間話し合って打ち解けてきたころ、レインが言った。
「トオル。ぜひ僕たちと一緒に組もう。」
「いいんですか。ありがとうございます!」
俺は即返事した。俺みたいな異端児を迎え入れてくれるとはな……。自分で言うのもなんだけど。
こうして俺たち5人はパーティを組むことになった。どうやらクエストを完了するまでの期間だけでなく、俺が抜けたいと思うまでパーティに所属してていいらしい。リーダーは引き続きレインで、パーティ名は『ビギナーズ』だ。うむ、いかにも初心者っぽい良い名前だ。
それからファミレスを出て皆でギルドへ戻り、先ほど俺が目をつけていたクエストを『ビギナーズ』として受注した。一体感とはこんなにも気持ちがいいものなのか。
クエストの完了期限は3日後までなので、後日また集まろうと約束し、俺たちは一旦解散した。
今までは1人だったから気にしていなかったが、パーティを組んだということは相応の責任がのしかかるということ。足を引っ張らないように気をつけよう。
そして、ゆくゆくは『ビギナーズ』の5人全員がAランクに昇格できたらいいな。もしそうなったらその時はパーティ名変えないと。
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