第8話 battle

俺はスライム討伐のため生息地である森林の奥地へと足を踏み入れた。

この辺りには低級の魔物しか出現しないらしいが、

一応警戒は怠らないようにしとこう。

こういう神経使う仕事、俺には苦手なんだがな……


草むらをかき分けて進んでいくうちに、ザザッ、と

何らかの生物の動く音が聞こえた。人間だったらどうしよう……と、少し怖がりながらも物音のした方へ武器屋で購入した鉄剣を構える。


息を呑んでその生物の出方をうかがっていると、

草むらからスライムが2体現れた。


よし、まずスライムであることに一安心。

未知の魔物だったら逃げ出さなきゃいけなかったからな。


スライムは俺の存在を認識しているはずだが、幸いにも攻撃してはこない。心苦しいけど隙だらけだぜ。


俺は一方のスライムを剣で斬りつける。

スライムはキュー、という鳴き声を出した。

初心者用の鉄剣じゃ一撃で倒すことはできないか…


ならば、何度も試みるのみ。今の攻撃でだいたい要領は掴んだ。

俺は無言で一方のスライムを斬りつけると、通算3度目の斬撃で倒すことに成功した。


こういうとき大抵の主人公は「うおお!」とか言いながら戦うのだろうが、俺は面倒なのでしない。


俺は同じ要領でもう1体も討伐し、発生したスライム液を回収した。


「あと13体分か・・・」


俺には果てしない作業に感じられ、ため息をつく。

まあ、あとはこの繰り返しだ。


俺はスライムを狩り続けた。



―――日が沈み始めた頃、俺はようやく15体分のスライム液の採集が終わった。

中には攻撃してくる個体もいたので、買った防具もすっかりボロボロだ。疲れた。

今までの人生で1番労働したんじゃないかと思えるくらいに。

俺省エネ設定なのに……。


てか、それよりはやくギルド戻らないと期限過ぎちまうな。


俺は急いでギルドへ向かった。過労死するよほんと…



「15体分のスライム液確認できました。クエスト完了です、お疲れ様でした。」

ギルドのお姉さんが言った。


これで完了報告は終わった。ちなみに、期限ギリギリだった…

まあ、何はともあれ初のクエストクリアを喜ぼう。


「こちら、報酬の10000Gです。」


「えっ。」報酬の多さに思わず声が出た。


10000Gも貰えたっけ。そういえば俺、報酬金額見てなかったかも。怠惰ですねぇ。


お姉さんが言うには、どうやらこのクエストは面倒すぎて誰もやりたがらないが故の報酬設定だそうだ。納得の理由だ。俺の場合、受けられるクエストがこれくらいしかなかったからな。


諸々の手続きを済ませ、俺はギルドを後にした。


ふと冒険者カードを見てみると、冒険者ポイントのゲージが半分くらい溜まっている。

あと1回クエストをクリアすればランクがDに上がりそうだ。

省エネの俺としては高額だとしてもスライム関連のクエストはもう受注したくない。早いとこ昇格しよう。


外はもう日が落ちていた。


どこで寝ようかな、と考えていると、今朝リースに

「毎月家賃を払えるならうちの部屋を1つ貸してあげてもいいわよ。」

と言われたのを思い出した。まさかの敷金礼金なし家賃毎月20000Gという破格の条件だ。まあ今の俺に20000Gは決して安くないが……。


というわけで俺は『ミミック』へと向かった。

街中をあらためて見回してみると、まだ行ったことのない店も多い。今度いろいろ行ってみよう。


「トオルくんおかえり。部屋の用意はできてるわ。」宿に着くと、リースが出迎えてくれた。


俺がここの部屋を借りることになるのが分かっていたみたいだ。


俺は案内された部屋に上がった。まあ昨日と同じ部屋なんだけど。当分はここに住むことになるだろう。



荷物を軽く整理すると、昨日と同じように体が勝手にベッドに向かい、俺はそのまま泥のように眠ってしまった。おやすみ異世界。

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