夫婦の契り 2
ここでの生活に慣れることと婚礼の儀の準備で忙しかったのとで、
「
「翠蓮が丁寧に面倒を見てくれたから……ありがとう。二人も、ありがとう。」
婚礼の儀の準備が進むにつれて忙しくなって、翠蓮は潤清さまにお願いをして友人を二人、私の面倒を見るために連れて来てくれた。
「本当に美しい花嫁姿です
菖芽の言う通り、この打ち掛けは本当に綺麗。きっと私では手にすることができない程高価なものに違いないから、引っかけてしまったらどうしよう、と怖くなる。
「蘭の刺繍がとても繊細です!
当主さま……。まだちゃんとお話したことはないけれど、桔杏の言う通り素敵な方だといいな。名前もくれたし、私が知らないだけで本当は優しい方なのかもしれない。
「あの、
ずっと気になっていたことを翠蓮に尋ねてみる。私の名前には、一体どんな意味があるんだろう。
「金魚の一種です。今はもう無い種ですが……」
「金魚?」
「はい。黒河の初代様が育てられていた金魚になります。
そんな金魚がいたんだ。黒河の家で産まれた金魚だから、当主さまは私にこの名前をつけたのかな。
「
「そうだったんだ……当主さまは、とても素敵な名前を送ってくださったのね。」
「私もそう思います。初代様の代で途絶えてしまった種ですが、きっと
こんなに素敵な名前をくださるのだから、当主さまはきっとお優しいよね……?
白無垢は重かったけれど、翠蓮たちのおかげでちゃんと歩けた。お屋敷の中に入るのは、これで二回目。
婚礼の儀をおこなう和室の前で、当主さま、潤清さまと遭遇する。初めてお会いした時も当主さまは黒い着物を召されていたけれど、同じ黒でも今日は煌びやかに見える。
「そちらも準備はよろしいようですね。では、定刻通りに。」
潤清さまが襖を開けて、私は当主さまと二人で部屋に入った。婚礼の儀と言っても、祝詞を上げていただいて当主さまと私で
黒鯨会の人たち、初めて見た……。もう婚礼の儀が始まるから、あまりじろじろ見ないようにしよう。
この前の襖に描かれていた生き物と同じ絵の屏風を背に座る。照日女大社からお越しになられた斎主さまが上げてくださる祝詞を聞いている間も、私に向けられる視線が少し心地悪かった。
物珍しそうな視線に身体を刺されている気分になる。
視線にじっと耐えてると、祝詞が終わった。漆塗りの盃が私と当主さまに用意されて、御神酒を注がれる。
……お酒、飲めるかなあ。中には倒れてしまう人もいると聞くけれど、大丈夫かな?
飲まないわけにはいかないから、恐る恐る口をつける。……あれ? これはお水?
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