朱雀の忌み子 5

部屋の外に案内されて、そのままお屋敷の中を歩かされる。かと思えばすぐ縁側に出て、外に続いた廊下の先に別のお屋敷。私がさっきまでいた所よりずっと小さいけれど、立派なお家。



「本日よりこちらをお使いください。諸事情によりあなたの元に侍女を付けることができませんが、ご理解頂けると助かります。」


「わ、分かりました……」



諸事情……もしかして、当主さまはお屋敷の人まで殺してしまったとか……? だから、お屋敷にあまり人の気配が無いのかな。


お家まで案内してくれた人は、一礼をすると戻ってしまった。ここには、私一人で住むのかな。それとも、当主さまも? それはちょっと怖い……。でも、当主さまにはお屋敷があるから、こちらには来られないよね?


この格好も重たくて辛いから、もう着替えてもいいのかな。私一人で脱げるかな……。


自分で着たわけじゃないから、どうやって脱げばいいか分からなくて苦労してるとさっき案内してくれた人がまたお家にやってきた。外がもう真っ暗になってる事に、部屋の灯りがついて初めて気づいた。



「お食事の方をお持ちしました……が、一体何をされてるのですか?」


「あ、き、着物を脱ごうと思って!」


「それがどうしたらそんな事に……手伝いますからじっとしていてください。」


「も、申し訳ございません……っ」



お嫁……に行くかもしれない家の人に手伝わせてしまった……。


お着替えを手伝ってもらったどころか、着替えの紬まで用意してもらった上に着付けまで手伝わせてしまった。



「ご迷惑をかけてしまい申し訳ございません」


「お気になさらず。では、私はこれで。皿は後ほど取りに来ますので、置いたままにしていてください。」


「あ、はい」


「湯浴みなどは一人でできますか?」


「大丈夫ですっ!」



さすがにそんな所までお手伝いさせられない……!


その人がまたお家を出た後に、名前を聞かなかったことに気づく。当主さまと雰囲気が似てて怖いと思ったけれど、優しい方だった。


改めて、自分のいる部屋をぐるりと見回す。今日の朝まで物置にいたのに、今はこんなに広い所にいる。お家にお風呂もついてて、灯りのつく部屋に温かくてたくさんあるご飯。これ全部で、私一人のだって聞いてびっくりした。


良いのかな……。それとも、この後当主さまに斬られちゃうのかな。これが最後のご飯、とか。だからこんなに美味しそうなものがたくさんあるの?



「いただきます……」



温かいご飯ってこんなに美味しいんだ。いつも食べてたのは冷たくて、お米が硬かったり魚がほとんど骨みたいなのだったり、小さいのばっかりだったから。



「美味しい……!!」



おつゆは熱くて舌が痛くなったけど、身体がぽかぽかしてとても美味しかった。

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