第2話 前昼
「おいしい」
普通の、ありふれたカフェの中。いつも満席、とは行かずとも人が多くいるその店は、今はたった四人しかいない。
「でしょー?ここってば、安い上に美味しいからオススメなのよねー」
「この美味さでこの値段はある意味詐欺だろ」
「
窓際に座っている一人の少女の周りに、東叉郎、リリー・ホワイトライト、あきま、の三人が座っている。
「おなかい、っぱい」
半分ほど残し、隣に座っているリリー・ホワイトライトへ渡す。綺麗な黒色の髪と、心配になる程肌が白い無表情の少女の名は、
そんな彼女の世間からの評価は、壊された人形という物である。
「食べかけっ……?!!?」
しかし、真実は全く違う。
「家宝にしてもいい…?」
「無駄にす、るのは、だめ」
「はい!」
十条静奈、彼女は化け物達から敬愛と忠誠を向けられた存在である。
「姫様、このあとどこに行きます〜?」
「ん、どこか行き、たいところ、ある?」
「最近、一緒にダンジョン行けてないから一緒に行きたいかも?」
「俺も同じ意見だな」
「わかった」
危険人物達が会計を済ませ、店を出ると少しずつ店内はいつもの様子に戻って行った。
十条静奈たちが退店した同時刻。目的地として定められたダンジョンの中。
登録者数五万人ほどの、ちょい人気配信者、
「何が起こってるのこれ…!」
《カオスすぎる》
《こんな事ってある?》
《早く出た方が良いって》
浅層、中層、深層の三つに分けられるダンジョン内の、中層地点。そこでは、本来あり得ない、ダンジョンの全ての魔物が蠢いていた。
「帰りたいのも山々なんですけどね、これ、身動きできませんよ…!たすけてぇ」
《それはそう》
《救助待つしかない、か…》
《報告はしておいたよ!》
《生き残ってくれ…!》
彼女のファンは心配のコメントを打ち。
《ダンジョン異変の真っ只中と聞いて》
《突撃しろよ》
《なんでこんなところいんだよ》
《無謀なの?》
騒ぎを聞いて集まった野次馬からは心の無い言葉が向けられている。
幸いな事に、東雲春は目の前の危機に目を取られ、そういうコメントには一切気づいていなかった。
(どうしよう!もうじっとするしかないんだけど!ていうか、いきなりこの状況になるのなんで!?中層と浅層の魔物なら、いくらいても逃げ切れるけど深層の魔物は無理だよぉ!)
ベタベタな展開まで、あと二時間。
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