陰の刻

結城 優希@毎日投稿

第1話 邂逅

 今日は日食の起きる日。そして、忌々しい陽が影に隠れる日。即ち我ら陰に属する者が力を存分に振るえる日だ。とは言っても我くらい弱小でなければ大した影響は受けないのだがな。僕は、いや違う我は…… 尊大な感じで威厳たっぷりにしたかったけどもういいや。


 僕は名も無き影だ。影同士を繋ぐ影の世界を通じてどんな場所にも行けるんだ!でも影から出られないから覗き見るくらいしか出来ないんだよね。影の世界っていうのは全ての物の上下が反転した濃淡の違う黒色のみで構成された世界。でもこの世界にいるのは基本的に影のみ。で、影は僕一人(?)しかいないから世界に僕一人(?)。たま〜にワンワン王とかジャックオーランタンとか来るんだけど、ほんとにたまにだから。


 さっき言った通り僕が現世で力をあんまり使えないってのは僕の化身がまぁ〜びっくりするくらい弱いんだよ。その分数は出せるし情報収集もお手の物なんだけど如何せん物理干渉と相性が悪くてさ。でも今日は久々の日食じゃん?いや〜楽しみだなぁ〜。


 夜行きゃいいじゃんって?それはアレよ。純粋で可愛い子たちは寝ちゃうんじゃん?クソガキ共に話しかけたってつまらないんだよ!僕はね、純粋な子たちとキャッキャウフフして癒されて、浄化されて、次の機会まで生きるための気力を補充したいんだよ。野暮なこと言ってんじゃねぇよ。


 さてと、身だしなみも整えたし行きますか!身だしなみってお前影だろ!真っ黒だろ!とか思ってるんだろうけど、身だしなみって言ってもアレだぞ?色とか付けると効率悪いから普段の人型に服みたいな形の影を着させて寝癖とかを整えた感じ。


 やっぱり第一印象って大事だと思うわけよ。大して変わってなくても多少マシになるならやる価値あるからさ。前々から目を付けてた純粋な子のところに行きますか。


名前 佐々木 俊介

性別 男

年齢 5

性格 純粋無垢で好奇心旺盛


 ふんふふ〜ん♪前から仲良くなりたかったんだよね〜っと……お邪魔しま〜す。父親は書斎でテレワークか。母親の方はママ友とお茶会か、こっちとしても都合いいね。俊介くんはっと……いたいた!

 

『やぁ、俊介くん!こんにちは!』

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