第14話

「……っ」


 トオルは目を覚ました。

 両手には枷がついていて、片足は鎖でとめられ、部屋の隅へとのびていた。


「は……? ここは? 俺は何をしてっ……」

「あ~起きた~?」


 部屋のドアが開けられて、そこからカレンが顔を出し、にこりと笑った。

 そして、呆然とするトオルの前まで歩く。


「ねえ、驚いた? 私が閉じ込めたんだよ、ここに。トオルくんのことが好きだから」

「……は」

「好きだよ。ここからは出ちゃだめだからね。私、ずっと我慢したんだよ? あの日から今日まで。簡単に釣られるトオルくんが悪いんだからさ」


 常に笑みを絶やさず、トオルの頬に手を当ててふふ、と声をもらした。


「ねえねえ。私さ、お金あるんだ。ここからずうっとトオルくんと暮らせるだけの、お金。私頑張ったんだよここまで。トオルくんと暮らすために」


 そこでようやく、意識を取り戻しかけたトオルが、顔を振って、カレンの手をどかした。


「おい、どうしたんだよ⁉ 中学卒業から連絡取れなくなって、引っ越しちまって。なんで……」

「あはは」


 カレンは満面の笑みを浮かべた。


「あははははははははぁ。うふふっ、トオルくんが私のこと覚えてくれてたぁ。嬉しい。やっぱり両想いだったのかなぁ。そうだったら、もっと嬉しい……!」


 トオルの態度など何も気にせず、カレンは笑った。


「ご飯作ってくるね。いい子にして待ってるんだよ」


 そう言って、カレンは立ち上がり、鼻歌を歌いながら部屋を出て行く。


 トオルは我に返り、なんとかなにかをできないか、とやってみようとするが、両手にしっかりと枷がつき、固められていることの影響は大きい。


 どうんかやろうとしても、鎖の長さでしか移動できず、何かを掴むにも手が動かないんじゃ、無理だった。


 何とか枷か鎖を外そうと悪戦苦闘しているうちに、カレンはもう一度やってきた。


「トオルくん、外そうとしちゃだめだからねぇ。あと、この扉は外側から開くか、私の鍵を使わないと開かないんだ。だから、脱出しようとか思わないでね。絶対に」


 ニコニコしながらも抑揚のない声に、トオルは恐怖を感じる。


 そして、カレンは下にコトリとお皿を置いた。

 そこには、できたてのホカホカと湯気がたっているチャーハンが盛られている。


 市販とは思えないほどの量と、具材の多さから、手作りなのだろう。


 しかし、カレンは怪しい薬の瓶をたくさん持っている。

 何か仕込まれている可能性が高い、と、トオルは困惑しながらも導き出した。


「ねぇ、トオルくん。私と付き合って。お願い」


 チャーハンの皿を手に取りながら、カレンは言った。


「その為だけに、私は今ここにいて、生きてるんだから」

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