014:作戦開始
地図を広げてからファビオは、自分が調べたという重要な3つの城について説明してくれる。
「まずは西方にある獣人の森と帝都の間に位置する〈ジストック城砦〉です。2つ目は北方の貴族領と帝都の間にある〈イントゥ城砦〉です。最後に東方の大きな港街と帝都の間にある〈ストングレッグ城砦〉です」
主要な大きな街、謀反を起こしそうな貴族の領地、人間種よりも遥かに戦闘力がある獣人族の森と言った主要なところに防衛の意味もある城砦を築いている。
今回の作戦において獣人の力も借りたいし、革命派が集まっているのも北方であり、僕の残りの部下が攻め込むのも東方の大きな港町だ。
という事は全てを切り崩さなければ帝都へと進軍する事ができないのである。
僕の頭の中の計算では12万の僕の部下に、獣人族と10万の貴族たちの兵士を合わせてロデベリス帝国の軍と戦うつもりである。
「まずは食事だけど、この食事が終わったらエルサは獣人族の森に行って勧誘してきてくれる?」
「任せて下さい! 獣人族に良い返事をさせます!」
「まぁそんなに強気に行かないで共存の道を目指したいって伝えてくれ………それでファビオは北方に行って、貴族たちをまとめてくれ」
「おっす! ビシバシッとまとめ上げてやります!」
2人とも張り切ってるし、これは期待ができるな。
それじゃあ僕は2人が行っている間に、大きな港に潜入して部下たちが入れるように準備をしよう。
すると店員さんがご飯を持ってきてくれた。
確かに美味しそうだ。
出来立てというのが分かるくらい湯気が立っていて、その湯気と共に美味しいそうな匂いが鼻にくる。
その匂いを嗅ぐと本能的に美味しいんだと思って、ヨダレがダラダラと出る。
「まぁ料理が冷めても嫌だし、とりあえず話があるのなら食べてからにしよう」
「はい! そうしましょう!」
「美味しいものは美味しいうちに食べるのが、やっぱり鉄則っすよね!」
僕たちは料理を一口パクッと食べる。
するとそこからは無言だった。
ひたすらに目の前の食べ物を搔っ食らう。
気がつけば5分もかからないうちに、3人とも完食していたのである。
「よし! 腹ごしらえもした事だし、皆んなで元気に働こうじゃないか! それじゃあ解散っ!」
『はいっ!!!!』
美味しい物も食べて満足した僕たちは、食べた分は働こうと各自の持ち場に行ってもらう事にした。
僕はほんの少しだけ、ここで休憩しようとレジーヌを呼んで港街での話し合いをする。
「僕たちは、これから港街に行って12万の兵士たちを迎える準備をしよう」
「はい! それで600ほどの船を迎えられるんでしょうか? 上陸作戦となると、市民にも少なからず被害が出てしまうような………」
「その為に、これから僕が行くんじゃないか。港街の市長や議員たちを買収する」
港街の市長は革命派の人間では無いので、そこを買収して600程度の船を迎え入れる事ができる。
だけど、そう簡単じゃないのは僕も理解している。
しかし買収できないと上陸作戦となって、市民に少なからず影響を与えてしまうかもしれない。
それだけはなるべく避けたいところだ。
「おいっ! お前たちは革命派の人間か? お前たちの事についての通報があった!」
おいおい。
まさかこんなところで足踏みするなんて………。
ここで面倒ごとになったら、港町に行く以前の話になっちゃうな。
どうにか対応するか。
目の前に現れたロデベリス帝国の兵士であろう男が3人もやってきたのである。
これは誰かが裏切ったのだと瞬時に理解する。
ここで捕まってしまったら、残りの作戦が白紙になってしまうので上手く対応したいと考えている。
そこで僕はレジーヌの耳元で喋りかける。
「僕が合図をしたら目を瞑るんだ。兵士たちが怯んだ隙に、ここから逃げるぞ」
「分かりました!」
僕はレジーヌに目を瞑るよう指示を出す。
そんな事をコショコショ喋っているので、兵士たちは不審がって槍を向けてくる。
そして僕は「今だ!」と声を出すとレジーヌは目を瞑って伏せるのである。
僕は光属性の初歩魔法である〈
この魔法はライトのように光を出す魔法だが、僕が威力を変えているので、とてつもない光を出す。
「うわっ!? なんだ!?」
目を瞑っていない兵士たちは、光に目をやられて何も見えないようになった。
その隙をついて僕はレジーヌの手を掴んで、店を飛び出すと用意していた馬に乗って街の外れまで走る。
ここまで来れば兵士たちは振り切れてるだろう。
何とか監視の眼を振り切ったとしても、誰かが密告しているので見つかるのは時間の問題だろう。
しかし幸いな事に僕たちが、銀翼の夜明けだという事はバレていないらしい。
「とりあえず作戦を白紙にならなくて良かった」
「これからどうしますか? この街は、もう拠点にはできませんよね?」
「早めに例の港街に入ろうか。それなら買収に時間をかけられるからね」
これを機会に話していた港街である〈パトワー〉に向かう事にしたのである。
市長の買収に時間がかかる可能性があるからだ。
僕が作戦を考えておいて、僕が守れないのは部下たちに示しがつかないからな。
それに市民への被害も抑えなければいけない。
色々な事を考えながら僕たちは、パトワーに向かう為に海に面している街道を通っていく。
「市長を買収する事はできるんでしょうか? 十二万の兵が来ないとなると根本的に作戦が………」
「まぁ確かに難しいは難しいだろうけど、僕が調べさせた事が本当だったら可能性はあるよ。それも五分五分ではあるんだけどね」
パトワーの視聴には裏の顔があるという事を、僕は調べさせていたので知っている。
そこで話をすれば買収に応じる可能性がある。
逆にいえば、そこでしか勝負するところが無い。
「どんな事を調べたんですか?」
「それは着いてからのお楽しみってところだな」
僕たちは6時間かけてパトワーに到着する。
パトワーに着く頃には日が暮れて夜になっていた。
今日のところは宿屋に泊まって交渉は明日にしようとしたのであるが、普通の宿屋だと僕たちの足がつく可能性があるとして安宿にした。
「こんな安宿に女の子を止めさせて申し訳ないね」
「いえいえ! マスターと、一緒に泊まれるのなら何処でも天国ですよ!」
「それなら良いけど………」
忠誠心が、ここまで来ると少し怖いなぁ。
まぁレジーヌも悪い子じゃないから別に、これくらいなら僕が我慢するけどさ。
勝負は明日からだな。
今日は疲れをとって、ゆっくりと休もう。
僕たちは食事も取らずに部屋で朝を迎えるのを待つ。
それはなるべく顔を見られないようにする為の事だ。
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