013:ナンバーズ

 アンダースを仲間にした事を伝えると、2人の想定していた反応とは違う反応だった。

 僕は反対して来ると思っていたのである。

 しかし2人は納得したように頷いている。



「2人ともアンダースを仲間にする事に反対しないの? いつもの2人だったら、新参は認めないって突っかかってもおかしくないだろ?」


「え? 別に反対なんてしませんよ! 確かにアンダースなんかを褒めてる時は恨みますけど………アラン様が決めたのなら文句はありません!」


「俺はエルサとは違って優秀な人材は、どんどん確保していった方が良いと思ってるっす」



 2人とも大きくなったじゃないか。

 昔ならアンダースを認めずに、どうにか排除しようとしてたじゃないか。

 それが今になっては迎え入れられるなんて、僕はとても感動してしまうだろうが。



「ちょっと! 私とは違うって何よ!」


「そのままだろ! アラン様が嫌がってるにも関わらずベタベタして嫌がらせてるだろうがよ! 俺は絶対にそんな事はしないんだよ!」


「はぁ? ムカつく言い方をしますね! アラン様は嫌がってなんていません! それを言うのなら貴方もアラン様に対して無礼じゃないですか!」


「ふざけんじゃねぇよ! 俺が1番アラン様を尊敬して崇めてんだよ。テメェみたいにベタベタしないでな」



 うん。

 こう言うところは変わってないなぁ……。

 もう少し仲良くできないものだろうか。

 内容が僕についてだから何とも言いづらい状況ってのが、とてつもない問題なんだよなぁ。


 この雰囲気を僕は、どうにかしたいと思って何か無いかと頭を回転させて考える。

 そして急拵えではあるが良い考えが思いつく。



「そういえば船旅で食事をしてなかった。どこか飯が食べられるところは無いのか?」


「それなら俺が用意してるっすよ! アラン様の為に、色々と調べておいたんですよ!」


「そうか! それじゃあ1番のオススメのところに連れて行ってくれないか」



 腹が減っているのは事実なので、食事を摂りたいと言うとファビオが食事する場所を探していたらしい。

 だから自分に任せて欲しいと言う。

 何とか喧嘩を止められたので、安堵しながら僕はファビオの案内で食堂に向かう。



「色々と食べ回ったけど、今から行く場所が1番のオススメなんですよ! アラン様も気にいると思います!」


「へぇそれは楽しみだな。食事に無頓着なファビオが、そこまで推すって事は良いところってわけだ」



 いつもならば食べれれば良いと言っていたファビオが、オススメっていうのだから本当に美味しいのだろうと予想ができる。

 そして到着したと言った場所は、日本の下町にもありそうな少し汚い定食屋のような雰囲気の場所だ。

 僕は久しぶりに懐かしさを感じるのである。

 僕の前世である和人の両親は、こんな食堂をやっていたので涙が出そうになってしまった。

 しかし食堂にエルサが文句をつけた。



「ここがアラン様に相応しいって事なんですか! これはアラン様に対する冒涜だわ!」


「はぁ? 何言ってんだよ。人間だけじゃなくて、この世の全ては外面じゃなくて中身が大切だろ?」


「確かにそうかもしれないけど、外見も大切なんじゃ無いのかしら? 中身が良くても外見で排除されるって事も十分にあると思うわ!」



 まぁ確かに互いの言いたい事は分かるが………。

 せっかく喧嘩を終わらせられたと思ったのに、またこんな事で喧嘩をするなんて嫌気が差してくるな。



「2人とも良い加減にしろ! ファビオの言う事もエルサの言う事も分かるが、まずは互いを尊重し合うって事を学んだらどうなんだ!」


『す すみませんでした………』



 久しぶりに僕は声を荒げて2人を叱った。

 別に仲良しこよしでやれと言いたいわけじゃないが、表面的にでも友好的な関係を見せる必要があるだろう。

 じゃないと部下への示しもつかなくなる。

 その大切さを2人に説明すると、2人は素直に僕に謝ってから互いに握手をして和解する。



「うんうん、それで良いんだよ。それじゃあファビオのオススメの店に入ろうじゃ無いか」



 僕はファビオのオススメする店の扉を開けて、中に入ると外見を見てから予想していた内装と合致する感じで期待を裏切られなかった。

 店員は50代くらいの女性で、好きな席に座って欲しいと言うので僕は真ん中の席を選んだ。

 僕とエルサとファビオでテーブルを囲む。

 レジーヌたちは外で見張りをしているのである。



「それでオススメの料理は何なんだ?」


「ここの肉料理は素晴らしいですよ! 是非とも食べて欲しいですね!」


「それじゃあそれにしようか」



 僕はファビオのオススメする料理を頼む事にした。

 店員の女性は注文を受けると、ニコッと笑ってから中坊の中に入っていくのである。

 この雰囲気が気に入り始めた。

 まさしくキタナシュランに出る感じだ。

 そして僕は料理が来るまで2人にある事を聞く。



「それでロデベリス帝国に〈アランの十戒ナンバーズ〉に入れそうな人はいたか?」


「いやぁそれが難しいですね。ギルドに入れても良いって人がいるんですけど、さすがにナンバーズに入れるのには………」


「私の方も同じです。確かに魔法の才能がある人はいるんですが、これから修行をして見込みがあるかどうかって話でして………」


「別に攻めてるわけじゃ無いから良いんだけど、さすがにナンバーズに入れそうな人はいないか」



 このアランの十戒ナンバーズというのは、銀翼の夜明けの10人の大幹部を指している言葉で、ナンバーズは現在3名となっている。

 そのメンバーは第1席に〈不唱〉の2つ名を持つ《ファビオ=ハーバー》、第2席に〈帰依〉の2つ名を持っている《エルサ=リドホルム》、第3席に〈純麗〉の2つ名を持っている《レジーヌ=マルシェフ》だ。

 この3人以外に、まだ大幹部に昇格する人間は現れていないのである。

 もっとギルドを強くする為には、このナンバーズを増やす必要があると僕たちは考えている。



「まぁナンバーズはおいおいとして、このロデベリス帝国の城砦について調べたか?」


「はい、城の数は25個くらいでした」


「その中で帝都を守ってるのは3箇所っすね」



 僕はナンバーズの話を切り上げて、この国にある城の数を聞くのである。

 この数が帝国革命において重要な事だ。

 その為、ここに力を入れて2人は調べていた。

 まず全体の城の数は25個くらいであり、その中で帝都の最終防衛ラインとして機能しているのが3つだったと僕に報告してくれる。

 言葉だけでは分からないので地図を頼む。

 そしてテーブルに地図を広げた。

 ここで初めてロデベリス帝国の全体像がわかった。

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