012:ロデベリス上陸

 僕に船をこだわっていると言う事を見抜かれたアンダースは、驚いてから溜息を吐くのである。

 喋らないと僕たちが納得しないと思った。

 そしてアンダースは口を開く。



「俺たちは元々漁師や船大工とか、海に関する仕事をしてたんだ。ある事があってから仕事を追われて、家族を食わせていく為に海賊になったんだ………」



 どうやらアンダースたちは、わざわざ海賊になったわけではなく成らざるを得なかったらしい。

 それを聞いた僕は黙って目を瞑り下を向く。

 そんな僕の様子を見たアンダースは「話してやったのに何も言わないのか」と言って来る。

 その発言に対して僕はある提案をする。



「それじゃあ僕からの提案だけど、僕たちが作ったギルドに入らないかい? 僕たちのギルドに船や海に関した知識がある人間をスカウトしたかったんです」


「お前たちが作ったギルドだと? そんな子供のお遊びみたいなのに付き合ってられるかよ!」


「別に今すぐと言うわけじゃないです。そうですね、僕が18歳くらいになったら向いに行きます」



 僕はこの段階でアンダースを勧誘していた。

 その返事として子供の遊びには付き合っていられないと、1度は断りこそしたが僕は時間を与えた。

 それは8年間の猶予だった。

 大切な話だけをすると海賊を脅して、港まで船を持っていくように指示を出した。

 海賊になったばかりのアンダースたちは、僕たちの言う事を聞いて船を港まで進めてくれた。

 これが僕とアンダースとの出会いだった。

 話は現代に戻る。



「それじゃあ8年前の答えを聞かせてもらおうかな。君たちは僕のギルドに入る? それとも入らない?」


「いや、そんないきなり答えを迫られたって………」


「いきなりって事は無いでしょ? 8年間も時間をあげたって言うのになぁ………でも君たちには、2つの選択肢しかないんだよ? ここで死ぬのか、それとも僕たちの仲間になって大金を稼ぐのか」



 僕の迫りに対してアンダースは固唾を飲む。

 このまま僕たちの仲間になると言う選択肢を取っても良いのだろうかと言う頭が働いている。

 今まで生きてきた人生の中で最大級に回転している。

 それでも僕が目の前でニコニコしながら仲間になるのか、それとも死ぬのかと言う選択肢を提示しているので回転が追いつかないのである。



「仲間になったら本当に大金が入るのか?」


「もちろんだよ。君たちの働きによるけどね」


「俺たちの家族が食うに困らないくらいの金か?」


「あぁ仲間になったら、仲間の家族も大切だから金も食糧と十分にあげるよ」



 アンダースが気にしているのは、家族が食べていけるのかと言うところだ。

 そして家族に手を出さないのかというところもある。

 僕はその条件に対して困らせないと約束する。

 即答で答えた事によってアンダースの頭の中は、さっきよりかは少しスッキリとして落ち着く。

 深く深呼吸をしてからアンダースは答えを出す。



「分かりましたよ。我々はアランさんの傘下に入る事を認めますよ………」


「そうかそうか! それは良い判断だよ。これから僕たちはロデベリス帝国に行かなきゃいけないから、また日を改めさせてもらうよ」



 アンダースは傘下に入る事を認めたのである。

 それを聞いた僕はアンダースの手を握って、上下に激しく振って感謝を伝える。

 これで僕たちの用事は終わったので、アンダースに日を改めて話をしにいくという。

 そして僕たちは海賊島を後にする。


 ふぅ何とかロデベリス帝国に心残りをしないでいけるようになったわぁ。

 これで水産に関する人材を確保できた。

 着々と新しい国づくりへの人材を集められてるな。



「マスター、先ほどは申し訳ありませんでした………マスターの事を侮辱するつもりは無かったんですか」


「別に気にして無いから良いよ。レジーヌは、もうちょっと気にしないって事を覚えなきゃ駄目だなぁ」



 船に戻るとレジーヌが、さっきの事を謝ってきた。

 別に僕は気にしていないので、わざわざ謝らなくて良いとレジーヌの頭をポンポンッとする。

 レジーヌはデレデレした顔をしているので、何とか気を良くしてくれたのだろう。

 僕はニコッと笑って船内の部屋に戻る。

 まだロデベリス帝国までは、もう少しだけかかるので部屋のベットで休むのである。

 真っ直ぐ港に入るわけではなく、革命派の人間が仕切っている港街を利用する。


 ここでバレたら面倒な事になるし、やっぱり先にエルサとファビオを潜り込ませて良かったな。

 アイツらなら上手くやってくれるだろうから、ロデベリスに着くまでは休もう。


 僕が部屋に入ってからスーッスーッと寝息を立てながら眠っていると、体感では直ぐに部屋をノックされる。

 誰かと思って扉を開けるとレジーヌが深々と頭を下げて待機していたのである。

 ここまでシャキッとされると、それはそれでやりづらさはあるのだが、止めてと言ったところで治らない。



「どうかしたの? 何か問題でもあった?」


「いえ! もう少しで手配していた港に到着します!」


「え? もう到着するの? 早いなぁ………まぁ早い分には問題ないか」



 もうロデベリス帝国に到着すると言う。

 全然眠ってはいないが遅れるよりかは良いかと、僕はレジーヌに起こしてくれてありがとうと言ってから部屋の中の荷物をまとめる。

 そして荷物を部下に任せて船首に出る。



「へぇアレがロデベリス帝国か。ここから見る限りは、まぁ普通の国に見えるよね」


「あそこはバレないように脱税をして、何とか持っていると言う話です」


「それは命懸けで戦ってるもんだな」



 遠くに見えていたロデベリス帝国に到着した。

 船を降りるとロデベリス帝国の港街の人と共に、アラン軍の兵士たちが深々と頭を下げて出迎えてくれた。

 僕は今だに慣れないので照れながら街に降り立つ。



「アラン様、お待ちしておりました。船旅はどうだったでしょうか? 苦痛とかありませんでしたか?」


「お前はアラン様に過保護すぎるんじゃないか? この人がそう簡単に根を上げるとは思わないぞ」


「2人ともお疲れ様、前乗りして色々と手配していてくれたんだよな。これからは僕も前線で戦うよ」



 部下たちの後ろからエルサとファビオが、喧嘩をしながらやってくるのである。

 この2人が喧嘩をするのは今に始まった事じゃない。

 それにしても2人とも良く成長したものだ。

 ファビオは男らしく剣士らしい顔つきになり、エルサはボンキュボンの美少女へと進化している。



「それでアラン様、少し寄るところがあったと聞きましたが、どちらに行っていたんですか?」


「ん? あぁアンダースって覚えてるか?」


「アンダース? アンダース……あっ! 8年前に捕まった海賊の船長すか?」


「そのアンダースを勧誘しに行ったんだよ」


「あぁ昔からアラン様は欲しいって言ってたもんな」



 2人は僕が立ち寄った場所はどこなのかと気にしていたので、アンダースを仲間にしに行ってたと伝える。

 すると2人は納得したのである。

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