006:カプリバの大将軍
王の間の扉が開くと絢爛豪華という言葉が、まさしく合うという感じの内装だ。
そしてその向かい奥に王の玉座に座す男がいた。
見た目はサンタクロースのような髭を生やして、それなりに恰幅が良い60代くらいの男だ。
「おぉ其方がアインザック家のアランか! まだ7歳と言うのに凛々しい顔をしておるわ」
「お お初にお目にかかります。アインザック家の第23
「うむ! ワシはカプリバ王国・第2
膝をついて深々と頭を下げながら身分と名を名乗る。
その後に国王陛下が自分の名前を教えてくれる。
自己紹介が終わったところで、国王陛下は僕に「表を上げよ」と言うので顔を上げた。
やはり近くで見ると優しそうな人だと言う印象を抱くくらい優しい目をしている。
「其方の事についてだが、コルードとの話し合いで騎士になりたいと聞いているが真か?」
「はい! 父上のような立派な騎士になりたいです!」
「素晴らしい事だ! 才能がある子が、才能だけではなく志も高いと言うのはな」
別に志が高いとかでは無いけど………。
とりあえず話を合わせておこうかな。
行儀良くしていないと、この国での待遇が悪くなる。
媚を売るわけじゃないが、この世界で良い人生を送る為には、ここが分岐点だろう。
「それで其方は、これから南方の地にある〈ヤルド〉という街に本拠地を置くと良い。その地にはカプリバ王国で大将軍の位を持つ《オロフ=バーリリンド》が領主を務めている地だ、騎士になるのならば色々と学べる事だろうな」
へぇ国は違うけど、コルードと同じ大将軍か。
最近コルードの修行を受けられていないし、これから復習する為に力をつけるには良い相手だ!
しかもその地を用意してくれるなんて、やっぱり優しい国王陛下だな。
国王陛下はヤルドという街にいるオロフ大将軍に、騎士になる為の修行をつけて貰えば良いと言ってくれた。
言葉には出さないが、これは良い機会だと笑う。
すると国王には、まだ仕事はあると言って謁見の時間が終わってしまうのである。
国王陛下が居なくなるまでは頭を下げて、王の間を出ていった後に顔を上げて立ち上がる。
「それではヤルドの街まで案内します。また馬車移動になりますが、申し訳ありませんがお許しください」
「いやいやまさか住むところまで、完璧に用意していただけるとは思いませんでした………」
疲労は蓄積されているが、ヤルドの街に行くまでは気が抜けないとピシッとしたまま馬車に乗り込む。
宰相の動向も王都までで護衛付きでヤルドに向かう。
考えてなかったけど、オロフ大将軍は怖い人じゃないだろうな………。
もしも前世の会社の課長みたいにブラックな人だったら、耐えられないかもしれない。
まぁそれくらいの方が強くなれるか。
異世界を生きていく為には生温い修行じゃあダメだ。
ちょっと気を引き締めよう。
異世界に転生したからと言って少し気が抜けていた自分を僕は気を引き締める。
馬車の中でヤルドに到着するまで、この異世界でハマった瞑想をやって心を落ち着かせる。
瞑想なんてって思うかとしれないが、これがハマると意外と良いものである。
馬車の揺れが気にならないくらいだ。
っていう風にやっているうちに6時間も経っていて、ヤルドに到着していた。
「到着しました。オロフ将軍が、もう少しで到着しますので少々お待ち下さい」
「わざわざ大将軍が、僕の事を迎えに来てくれるんですか!? 忙しいだろうに………」
「オロフ将軍が直々にお会いしたいと、ジョゼ宰相に直談判していました」
まさかそんな風に思ってくれているとは………。
どうして会った事も無い7歳の子供に会いたいんだ。
もしかしてオロフ大将軍って………。
いやいや! それを考えるは気持ち悪いし、大将軍に失礼だから止めておこう。
嫌な想像をしながら馬車で待つこと30分。
この馬車に向かって10騎の騎馬隊がやってくる。
遠くからでも分かる。
明らかに殺気というのか、何というのか。
オーラ全開で向かってくるのである。
アレが大将軍かよ………。
コルードってあんなに殺気プンプンだったか?
いやいやそんなわけが無い。
コルードは、あんなに殺気を出して無かったぞ。
どんどん近づいてきて僕の前にギリギリで止まる。
おそらくオロフ大将軍だと思われる男は、40代くらいで顔には多くの傷があり、髪の毛は灰色、目は熱血感があるような赤い目をしている。
馬から降りると僕を抱き抱える。
「おぉ! お前がコルードの倅か!」
「は はい! アランと申します………」
「コルードに似て凛々しい顔をしているな! 話は聞いているぞ。お前が来たという事は、コルードはしくじったって事か………まぁ気にするな! お前はコルードに変わって俺が強くしてやる!」
「あ ありがとうございます!」
あっこれは僕が想定していたよりも面倒なタイプだ。
子供が好きな変態じゃなくて、これは例の熱いテニスプレイヤータイプの人だ………。
この人に教えられたら、どんな人間になるんだろう。
でも、この国で1番強くてコルードよりも強いってなると腕は信用できるか。
とりあえず下ろしてもらうように頼んで、高い高いの状態から下ろしてもらった。
改めて下から見ると馬鹿デカい。
これは感覚ではあるが2メートルはあるだろう。
そんな事を思っていると、オロフ大将軍は馬に乗って後ろの尻の部分を軽くトントンッと叩く。
「ほら! 早く乗りなよ。俺の屋敷に案内してやるから出発するぞ!」
「え!? 後ろに乗って良いんですか?」
「おぉ今日から俺の弟子なんだから当たり前だろ!」
オロフ大将軍の後ろに乗って屋敷に向かった。
この日は屋敷の案内やヤルドの周辺の紹介だけで、1日が終わって修行は次の日から始まった。
やはりコルードよりも強いオロフ大将軍の修行は、想定していたよりも遥かに厳しかった。
全身の穴という穴から血が出る程の過酷さだ。
「どうしたどうした! そんなもんで本物の騎士になれると思ってんのか? コルードの修行ってのは、そんなに甘かったのか?」
甘かったよ……。
甘かったというか、きっとコルードは段階を踏んでやろうとしてたんだろうな。
この男は段階とか、そんな話を知ってるはずが無い。
7歳児に、この練習は馬鹿げてるだろ………。
しかし僕は文句なんて言えるわけもなく、立ち上がってオロフ大将軍のメニューについて行くしかない。
1時間もすると足腰がガクガクと震え出す。
そんな事を気にしない大将軍は、時間が進むにつれてメニューも厳しさを増して行く。
これを毎日なんて考えたら体が震え出してくる。
「よし! 今日のところは、ここまでにしよう。キツいとは思うが、これを続ければアランが憧れる騎士になれるはずだ! これからも精進するように!」
「はい……ありがとうございました」
修行が終わると全身の泥を風呂場で洗い流し、ゾンビになったかのようにフラフラしながら自室に戻る。
そしてベットにダイブすると気を失うように眠る。
疲れが取れないまま朝を迎えて、食事をとってから昨日と同じメニューをこなす。
これを毎日続けて強くならないなら、絶対にサボってるだろと思ってしまうくらい辛い。
しかし心が折れそうになった時、コルードやローズの事を思い出して歯を食いしばり修行に着いていく。
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