003:ハードモード
僕が異世界に転生してから早くも5年が経った。
そして遂に適正テストの日がやってくる。
この適正テストで僕が得意な魔法の属性とユニーク・スキルの有無が分かる。
僕としてもワクワクを隠せずにいる。
コルードとローズも自分の息子に、どれだけの才能があるのかと期待と不安で落ち着きが無い。
「この子がコルード殿の嫡男ですか? 素晴らしい顔つきをしている! さぁこちらの水晶に手を翳してみて下さい。そうすれば得意属性魔法が分かります」
へぇ想像通りの水晶だなぁ。
これに手を置けば使える魔法の属性がわかるんだな。
虹色とか出たら、どうしようか!
この時点で異世界ライフがイージーモードになってくれれば良いのになぁ。
僕は神父に言われた通り、教会の中心にある成人男性くらい大きい水晶に手を置く。
ワクワクしながら結果を待っていると水晶が光った。
どうなるのかと皆んなが注視していると結果が出た。
ん? これはどういう結果だ?
何も変化がないぞ………。
水晶に変化がない為、この場にいる4人は何とも言えないような雰囲気になった。
その均衡を破ったのは神父さんだ。
「これはえぇと………どういう事でしょうか」
アンタも分からないのかよ!
っていうか、この雰囲気からして僕には魔力ってのが無いんじゃ無いか?
じゃないと、こんなに気まずくはならないだろ。
冷静に考えたら、これは何とも言えない状況なんじゃないだろうか。
大将軍家系の嫡男が全くの無能だと知れ渡る。
そうなったら異世界ライフがイージーモードになるどころか、ハードモード一直線だ!
そんな最悪な事態を考えている僕を尻目に、神父さんは空気を変えなきゃと頭を回転させる。
そしてまた口を開くのである。
「ま まぁ! ユニーク・スキルの影響というのも考えられますので、そっちを調べましょう!」
「そうなのか! ユニーク・スキルを調べよう!」
「それじゃあこちらの水晶に手を翳して下さい!」
ユニーク・スキルの影響を受けて、属性魔法が出ない可能性があるという。
それじゃあユニーク・スキルを調べる為に、別の水晶を用意して、そっちに手を翳すようにいう。
僕は恐る恐る手を翳してみた。
すると水晶の中に文字が浮かんでくる。
その文字は〈
あれ? これってどこかで聞いた事が………。
あっ! これって僕が死ぬ前に、どこからか聞こえて来た声が言ってた事じゃないか。
まさか僕の意見が、この世界に反映されてるのか?
そうだとしたら最高だな。
「コピーっていうと、どんなユニーク・スキルだ?」
「名前からしまして………魔法やユニーク・スキルをコピーする事ができるのでは無いですか?」
「だとしたら、得意属性が無いのも納得できるな! これは鍛え方によっては、世界で最強の騎士になるんじゃ無いだろうか!」
コルードは僕のユニーク・スキルの可能性を感じ、最強の騎士になれるのではとワクワクしている。
ローズも自分の子の可能性を感じる笑顔になった。
さっきまでの雰囲気とは比べ物にならない。
もしも簡単にコピーする事ができるのならば、それは本当にイージーゲームになるぞ!
まぁそう簡単にいかないんだろうけどな………。
とにかくコピーって能力が分かったからには、それについて研究しなきゃいけないな。
とても明るい雰囲気で僕たちは屋敷に戻る。
この日も剣の修行は怠らない。
コルードは気持ちが乗っているので、いつも以上に熱が入って厳しい修行になる。
しかしこの世界線での僕は身体能力が高い。
その為、5歳とは思えない動きで対応できる。
「良いぞ! 日に日に良くなってる。このまま剣の修行と並行してユニーク・スキルの研究をするんだぞ」
「はい、父上! これから頑張らせていただきます!」
「うん! その息だ。このまま行けば、俺なんて目じゃ無いくらいの騎士になれるぞ!」
このコルードが、そこまで言うのか。
それなら本当に最強の騎士になれる気がしてきたぞ。
まぁそれは僕の研究によるのかもしれないけどな。
この日から僕のユニーク・スキルの研究が始まる。
どういう条件でコピーできて、そこからどこまでの範囲でユニーク・スキルが使えるのかという事を調べる。
やはり説明書が無い状態で、手探りっていうのは想定したよりも大変だった。
ある程度、情報を集めるのに1年もかかった。
それでもきっと把握した事は、全ての半分もいっていないんじゃ無いだろうか。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
適正テストが行なわれてから2年が経った。
そして僕は7歳になった。
変わった事と言えば、少し背が伸びて剣術や魔法についての知識量が増えたところだ。
「あら、坊ちゃん。今日も修行をするのですか?」
「ん? あぁ剣の修行は、毎日やらないと進歩しないからな。父上が居なくてもやらなければ」
「素晴らしいです! 何かご用がありましたら、いつでもお声をかけて下さい」
僕が剣を持って庭に出ようとすると、そこにメイド長が声をかけて来た。
ここ最近この屋敷にコルードが帰って来ないので、僕1人で剣の修行をしている。
それにしても1ヶ月も屋敷を空けた事は無かったコルードだったが、ここ最近は屋敷にいる事が少ないんだ。
どうなってるんだろうか。
ローズにコルードの事を聞いたら、帝都で仕事をしている聞いたけど、そんなに屋敷を空けるくらい忙しいって事だよな?
それって何らかの問題が抱えてるんじゃ無いのか?
そう考えたら屋敷を空けるようになる前に、コルードを訪ねて多くの人間が屋敷を訪れた事が理解できる。
コルードたちに何らかの問題が起きたのではと考えた僕は、メイド長や執事長に話を聞きに行った。
もしかしたら何かを知っているかも知れないからだ。
「父上は、どちらに行っているんだ? 剣の修行で聞きたい事があるのだが………」
「そ それは私たちにも分かりません………」
「そうか、それなら仕方ないな。父上が帰ってくるまで静かに待っている事にしよう」
やっぱり何かを知ってるみたいだな。
無理矢理にでも聞いたら教えてくれるだろうが、それがバレたら面倒な事になるだろうなぁ………。
まぁ帰ってくるのを待つしか無いか。
そう僕は思っていたのだが、この時には既に帝都で問題が起きていたのである。
それが分かるのは今から5日後の事だった。
モーニングを食べ終わった頃、その為10時過ぎくらいに屋敷へ1人の兵士がやってくる。
その兵士の顔は青ざめていて、呼吸も明らかに荒立っている感じだ。
まさしく焦っているのが手に取って分かるくらい。
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