1-6 prima(開幕)
──1797年、4月第1週。
翌日、早朝。セリスは
──それは国王の勅命の書簡であることを意味していた。セリスはその意味することを知りながら、食事を続けていた。
「ユーリ、読んでくれ。」
セリスがそう言ったのは、朝食がすんだ時だった。
「かしこまりました。“昨日のベアトリーチェ嬢の件に新たに追加する。1つ、12騎士の意味を教えろ。2つ、ベアトリーチェ嬢の理論が正しいか見極めろ。3つ、12騎士としての戦い方を教えろ。まあ、3つ目も件は
セリスは話の最後の言葉にトドメを刺されたのか心ここにあらずといった表情で、
「お嬢様、セリスお嬢様。」
今まで一度も見たことのない様子に、ユーリは良からぬ事が、
「無報酬でこき使われるのは
と言って、テラスからそのまま
おはようと言ってヴィーチェが起きてきたのはその1時間後だった。
「遅いお目覚めだな、私は一仕事終えてきたところだ。さっさと食事と訓練用戦闘服に着替えてくれ。楽しい鬼ごっことシューティングゲームが待っている。」
遅いと言っても、まだ6時すぎ。昨日の件を加味しても、十分早い時間ではある。
「美容のためには十分な睡眠は必要なのよ。わかった、
セリスの力について、ヴィーチェは昨夕調べていた。小さな端末のディスプレイにタッチすると、3Dホログラムに変化し、ヒツジのアバターが恭しく礼をした。
〚ヒツジと申します。お呼びでしょうか、ベアトリーチェ様。〛
「陛下に守秘回線で繋いでもらっていい。早急の用事なの。」
〚陛下にお伺いを立ててまいります。〛
そう言うとヒツジのアバターは消えて、優しい保留音が流れていた。
ヴィーチェがこの端末を受け取ったのは、12騎士に
〚陛下より承認を得られました。音声のみですがお繋ぎ致します。〛
ヒツジのアバターから、音声のみという無機質な文字の表示に変わった。
『5位、
国王の独特の誰もを
「恐れながら陛下。4位とは何者なのです。昼間の剣技、そして先程魔族をいとも
『
そう言うと国王からのアクセスは一方的に遮断されてしまった。
「わかった、
理由もなく勝ち誇った態度のヴィーチェに少し
昨今、文字は電子化されており、紙の本は珍しくなってしまっていた、紙の本は教皇が持っている聖なる祈りの本、【聖典】が有名であるが、あれは本自体が力を帯びた術具といった方が正しい。後は、国立図書館の
「その本って、国立図書館から
ヴィーチェの
「レプリカだ。本物を
セリスの言葉もどこ吹く風。ヴィーチェはさらに質問を続ける。
「そのデータベースってだれでもアクセスできないわよね。」
「気になるなら、ハッキングでもご自由に。オクタゴンrfs防壁を突破してお縄になるより、アクセス権のある私を通したほうが安全ではないか。」
「急に言われて思いつかないけど、その時はお願いしますにして、なんでアンタがアクセス権もっている訳を聞かせなさいよ。」
答えた方が面倒だったとセリスはこころのなかで悪態をついた。
「それは私が表向き
セリスのこの状況を
「お
それだけ言うとセリスは読んでいた本を閉じると、自室に戻って行った。
30分後、セリスたちは森の中にある長いフェンスに【危険、関係者以外立ち入り禁止。許可なき者は警告なく射殺する】と
「セリス、物騒じゃない。何なのここ。」
「王国特殊第1攻撃隊の演習場。今日は通称特1の
ヴィーチェは
「どう考えても、こっちが不利でしょう。相手は悪魔も泣いて
ヴィーチェの言葉に自身が予想した100点満点すぎる答えにセリスは不敵な笑みを浮かべざるを得なかった。
「ふぅん、5位殿はできないと
口を開けば人を食った様な物言いばかりのセリスに何だか踊らされている様な気がしていた。
───それから二年経過した。───
3人で暮らす事が当たり前になった頃、それは突然やってきた。
夜の闇を引き裂く強烈な光の後に
セリスたちは本能で何かとんでもないことが起きたのではと感じたと同時に家の中にあるあらゆるディスプレイが
『12騎士1位として
これは長い戦いの開幕を告げる音だったのかも知れない。
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