1-4 To keep some cash around. (小銭稼ぎ)
セリスははしゃぐベアトリーチェを横目に冷ややかに見ながら、話を始める。
「ここが私の…。」
言い終わらない内にベアトリーチェは、興奮した様子で
「素敵、山小屋風の一軒家って感じなのね。宮殿みたいな所に住んでいるのかと思ったわ。でもなんてところに住んでいるの。」
セリスは騒ぎ立てているベアトリーチェを軽く
ベアトリーチェが騒ぐのも無理はない。セリスの家は
「ここだ。先に入れ。靴は玄関で脱ぐように。うちは土足禁止だ。」
外見はどこか懐かしい雰囲気を醸し出す家。しかし、玄関を開けると、そこには最新の技術が暮らしを支える、快適な空間が広がっていた。来訪者を映し出すモニターや、室温をぴたりと保つ空調設備は、どこか近未来的でさえある。それでも、この家に一歩足を踏み入れると、温かい木の香りが鼻をくすぐり、どこか懐かしいような、ホッとするような感覚に包まれる。それは、あたたかみのある照明の色合いや、ところどころに置かれた観葉植物、そして、何よりも人の気配が感じられるからだろう。
「奥がリビングだ。紹介したい者がいる。」
リビングはひろびろとして、柔らかい
「こっちが私の有能な
ユリウスは
「お初にお目にかかります。どうぞ私の事は、どうかユーリとお呼び下さい。」
ユーリは柔らかい表情で、ベアトリーチェの訪問を歓迎していた。銀色の髪に
「ユーリ、こちらが5位となったベアトリーチェ・ド・チェンチ嬢。なんの
ベアトリーチェもユーリに
「紹介に預かりました、ベアトリーチェよ。2人ともヴィーチェと呼んで。その方が気楽だわ。ところで早くこのドレス脱ぎたいんだけど。コルセットがきついのよ。」
ヴィーチェはドレスの
「それには同感だ。こんなきつくてゴテゴテした服なんていつまでも着ていられないからな。ところでユーリ、ヴィーチェの荷物は届いたのか。」
セリスは詰め
「先程、
「後でお礼に行かねばな。ヴィーチェ、お互い着替えて街に行かないか。食事まで、時間がありそうだし、引っ越しを手伝ってくれた者たちへの礼をしたい。そうだ服装は簡単でいいぞ。それにしても今日は予定外の金にならぬ
と、独り言をブツブツ言いながら自室に戻っていった。
「ヴィーチェ様のお部屋は、この部屋を出られて左側のセリス様のお部屋の向かい側になっています。」
ヴィーチェはユーリの顔をじっと見ていたかと思うと急に顔を近づけた。
「本当に人工生命体なの。ごめんなさい、論文では読んだことあるけど、最後の人工生命体の記録は1784年が最後だから、ワタシ初めて見たの。ワタシが人工生命体で知っているのは、主人に対し忠誠を誓っていること、
ユーリは苦笑いするとこう続けた。
「セリス様が少しずつ
ユーリの長い
「早くしてくれないか。」
セリスの冷たい声が部屋に響く。
「お引き留め致しまして申し訳ございませんでした、ヴィーチェ様。ゆっくりとお着替えください。お着替えされた衣装などは、後程私が片付けますので、そのままで構いません。」
ユーリは先程とは変わって、また自然な微笑みで言った。
「いろいろ聞きたいことあるけど、とにかく着替えてくる。」
ヴィーチェはそのいかにも高そうなドレスを、雑に
「お嬢様、ヴィーチェ様のお
「私はカモミールティーを。ディフューザーにはラベンダーを頼む。今日はつまらない事があって疲れている。夕食のメインには肉料理を。その後は
「Yes, my lord.」
そこには単なる上下関係というよりも、適度な距離感を取ってきた経験値が育てた関係性があった。ヴィーチェが戻ってくるまで、静かで穏やかな時が流れていた。セリスはソファーに深く腰を掛け、カモミールティーをときどき飲みながら、六面体を器用に浮かせ、くるくると回していた。六面体をよく見ると各面3×3の9ますに分割され、6色で構成されている。6色は火、水、風、土、光、闇となっており、セリスはそれを見ずに色を全面
「準備できたわ。」
ヴィーチェの声に振り向くと、長い髪は高い位置で1つにまとめられ、ゆったりとした白のトップスに少し細めのジーンズが却ってスタイルの良さを
「ラフな
ヴィーチェの言葉に、セリスは六面体をテーブルに置き、ヴィーチェに声を掛けた。
「別に何を着ていっても構わないが、下の街に言った後、もう一か所行きたいところがある。12騎士に認められた力量があれば
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