1-2 Blink.(瞬き)
──同日、14時頃。
「国王陛下のお出ましです。」
国王は王家の青、ロイヤルブルーのガウンを羽織り、左手には王冠を抱えており、この集りが格の高い物である事を象徴していた。
「
すっと顔をあげたオルロフ一家は
「では、直接私が問う。オルロフの子弟、貴様は何を望む。」
オルロフ伯の息子のブライアン・オルロフは
「お答えします、陛下。私は12騎士に入る事を
その言葉を聞いて、ニヤリとした笑みを浮かべた国王は続ける。
「おとぎ話の12騎士か。この世界を護る最強の
ブライアンは、待ちかねた様子で問いを受けると、満面の笑みを浮かべ、力強く語り始めた。
「私は魔法大学を首席で卒業後、現在
国王はブライアンを鼻で笑い、
「その程度か、実に
その言葉に少し
「はっ、30歳ちょうどになります。」
国王は、玉座からブライアンを
「つまらぬな。世には10歳にして魔法大学大学院を卒業した
嫌悪感を示しはじめた国王にブライアンは食い下がる。
「ですが、私には絶対的な魔法力と剣技がございます。」
その声に、どこからともなく静かな笑いがおきた。
オルロフ伯たちは、
「力というものを今からお見せしよう。リンデンバウム卿、よろしいな。」
控えたままのプラチナブロンドの髪の女性に国王は言葉を投げかける。
「この場で一番年若い私が
冷たい瞳は国王を全く捕らえておらず、その近くにいる教皇の姿を静かに見つめていた。それに教皇も気がついたのか、優しく微笑みながら小さく手を振っていた。
─全くあの人は、のんきな。
リンデンバウム卿は小さく溜息をついて、視界の端に、国王の姿を入れる。
「良くも悪くも 嫌味しか出てこない口だな。さて、お集まりの
オルロフ伯が
「我が息子が負けるなど、ありえません。10分もあれば、相手を打ちのめして、この場から追い出すことができます。」
「次、オルロフ夫人。」
国王は次々に質問を投げかける。
「私共のブライアンが勝ちましょう。時間は夫と同じでございます。」
国王は、玉座に深く腰掛け、こちらを見下ろしながら、鼻で笑ってこう言った。
「…ふーん、それは面白い冗談だ。…本当にそう思うか。次、ブライアン・オルロフ。」
「
国王は肩をすくめ、やれやれと小さく
「ではアルトワ公、
「リンデンバウム卿の勝ちでしょう、兄上。時間は10秒も掛からないかと。」
アルトワ公の目の奥がこれから始まる
「ペイロール伯。」
「率直に申し上げますと、リンデンバウム卿が1秒以内に勝利するかと存じます。」
ペイロール伯は無表情で
「
「立場上、
教皇は静かに答える。国王はそれを聞いて満足したのか不気味な笑みを浮かべる。
「さあ、これで3対3の同票となった。どちらを選ぶかね、ベアトリーチェ・ド・チェンチ。」
ベアトリーチェは控えたままだが、明らかにこの
「ワタシは新参者ですから、どちらともはかりかねますわ。」
国王はベアトリーチェの言葉を待っていたかのように、高笑いを始めた。
「ああ、愉快、愉快。これでは
国王の煽るような態度に、セリスの忍耐は限界に達していた。オルロフたちに絶望をみせつけるため、あえて同票という結果を作り出し、国王はセリスを挑発しようと目論んでいた。心の奥底では、この場からすべてを消し去りたいという衝動に駆られていたが、その後の混乱を恐れて、何とか感情を抑え込んでいる。
「仰せの通りに。Your Majesty.」
その声を聞いて、ブライアンは自分の対戦相手となるセリスの姿を横目に見た。
年は随分と若いがこの事態に
──ブライアンはそのあまりの美しさに
だがブライアンは、剣の柄を握りしめながら、自身の内なる葛藤と戦っていた。その視線の先には、美しさと冷酷さを併せ持つ
『この美しい女神のような人を倒すのか...。』
その言葉は、ブライアンの心の奥底から漏れた呟きだった。美しき女神への畏敬の念と、勝利を掴みたいという欲望が、ブライアンの心を掻き乱す。剣の重みは、彼の決意を固めようとするが、同時に、その美しさに心を奪われそうになる自分がいた。
『だが、今は勝利の時。我が力を示し、私は最強の騎士となる。』
そう自らを奮い立たせ、ブライアンは深呼吸をする。セリスの冷徹な瞳が、彼の心に突き刺さる。しかし、その鋭い視線は、同時に彼の闘争心を燃え上がらせると同時にあの美しい女神を屈服させたい欲求に駆られていた。
『この戦いに勝てば、私は...。』
勝利の先に本当は何があるのか。名声か、それとも...。ブライアンは、まだ見ぬ未来への期待と不安を抱きながら、剣を構えた。
「では、私の合図で始めよう。両者抜刀。捧げ剣。
その声と同時にセリスが剣を構えるやいなや、周囲の空気が張り詰めた。彼女の瞳には、冷酷な光が宿り、ブライアンは恐怖に震えた。まるで、狩りに来た猛獣のようなオーラが、セリスから溢れ出ていた。次の瞬間、セリスは素早い動きでブライアンの武器を叩き落とた。喉元に今まさに突き破らんと
「リンデンバウム卿、
国王の言葉に、
「これでわかったであろう。力とはこういうことだ。ついでに良いことを教えてやろう。リンデンバウム卿、最終学歴と卒業時の年齢、それに今の年齢は。」
国王の問いにつまらなそうな顔でセリスは応えた。
「魔法大学大学院卒、当時10歳で現在18歳。陛下はご存知の事を何を今更。」
ブライアンは思った。ここにいる者の全てが結果がわかった上で、自分たちを
国王はわざと
「さて、皆の者、
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