第三日目

 雨が降り始めた。しかし、これは普通の雨ではない。酸性雨だ。防護服のおかげで直接肌に触れることはないが、地面に落ちた雨滴が音を立てて地面を溶かしていく。


「こんな雨の中を歩くのは危険だ」


 近くの建物の残骸に避難する。かつてはオフィスビルだったのだろうか。錆びついたデスクや椅子が散乱している。


 雨宿りの間、バックパックの中の食料を確認する。まだ4日分ある。しかし、それ以上生きられるのだろうか。胸のパネルは容赦なく「残り5日」を示している。


「なぜ俺だけが……」


 疑問が湧き上がる。なぜ自分だけがこの状況に置かれているのか。答えはない。ただ、前に進むしかない。


 雨が止んだ頃、建物を出る。そこで驚愕の光景を目にする。雨で洗い流された地面から、人骨が露出していたのだ。


「これが……戦争の結果か」


 言葉を失う。しかし、悲しむ暇はない。生きるために、歩き続けなければならない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る