第9話
一方その頃…
ある一軒家に住む少女は突然消えた光に驚き、一緒に居間でテレビを見ていた父親に抱きついていた。
「おい…お前はもう高校生だろ?停電くらいでそんなに騒がなくても…」
「やだっ!!暗いの怖いし……それに、夏の夜って虫がいっぱいいるじゃない!暗くなったらどこにいるのか分かんないから、それが嫌よ……」
涙声で訴える少女は、震える体を父の体温で落ち着かせていた。
「…そう言えばお前、小学生の授業参観の時に、理科の授業か何かで『虫は気持ち悪いから絶滅しちゃえばいいと思います』とか言って先生に怒られてたなぁ…」
「だってほんとにそうじゃん!!今だってそれは変わんないよ!あんなもの、いる意味ないから……とにかく虫が出る前に早く懐中電灯とか持ってきてよ!!」
「まあまあそう焦るなって。……全く…虫なんて、こっちが何かしない限り特に害を与えてこないのに…」
そう言いながら、少女の父親は物置小屋にあったはずの懐中電灯を探しに腰を上げた。
(懐中電灯…あった!これだこれだ。)
父親は懐中電灯を見つけ、居間で待っている娘に手渡した。
「あーよかった!これで敵の動きがあればすぐに分かるわ。」
「敵って大袈裟だな…たかが虫だろ?…ていうか、そんなもの持ってたらむしろ蛾とか寄ってくるんじゃないのか?」
「そしたらすかさずこのキ○チョールで一撃よっ!お父さん、これ借りていい?私、確か玄関に大事なアクセサリー落としてきたから」
「いいけど電気が復旧してからのほうが良くないか?」
「嫌よ!彼氏から貰った高級なものなんだから!」
そう言って懐中電灯を持ち玄関に向かう娘を見て、父親はその背中に心の中で言った。
(あのネックレスの綺麗なメタリック…玉虫でできてるんだけどな……)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます