第6話

「わぁー!!やっぱり凄いね!」


祭りの当日。


俺の横では、浴衣を着て化粧をし、大きなダリアの髪飾りをした静夏が歓声を上げていた。



「やっぱりさー、祭りを夜にやるのも理に適ってるよな。涼しいからこんなに長時間外にいられると思わない?」


「はぁー?また訳分かんないこと言ってる…。んもう、せっかくの花火なのにロマンが無いっていうかさぁ」


「そうかな?ロマンしかないと思うけど?」


「は?どこがよ」


「……もし浴衣を着たお前と花火を見るのが日中だったら……暑くて仕方ない」


「えっ…なっ……どういう意味?それ」



静夏は、何故か顔を赤らめ狼狽えている。



「そのまんまの意味だよ。……つか、既にあっついわ俺…」


そう言いながら、俺は扇子で顔を仰ぐ。


全身暑いが、特に顔の火照りが収まってくれないのだ。



さっきまで涼しそうな顔をしていた静夏も、俺に釣られたかのように顔を赤らめ手で仰いでいる。



今日の2人の間に流れる熱い空気は、きっと押し寄せる人の熱気のせいでも、夜空に大きな花を咲かせる花火のせいでもない。



だけど俺は自分の言葉の通り、今が夜で良かったと思っている。




自主練や勉強に燃えるのとは違う新しい種類の夜の暑さに、俺はどうしたら良いか分からずにいた。


ただひたすら、俺の隣で花火を見上げる、美しくも静かな横顔を眺めているしかなかったのだ。

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