問.2 能力者 鬼ごっこ 学生

 早々に弁当を終えると、少年Aは鬼ごっこをしようと友達に提案する。

 とくにする事もないので頷く友達。

 少年Bは能力を使っての鬼ごっこかを確認してきた。それを聞いて少年Cはニヤッと笑い、能力を使っての鬼ごっこをやろうと決定してしまう。

 空に文字を描く、空書き。書かれた文字は意味の通りに現れる。最初こそは普通の鬼ごっこになっていたが、だんだんと各々が力を発揮していく。


「糸」


 少年Bは廊下に糸を張った。少年Cはそれを飛び越える。


「そんなんじゃ捕まらねーし」

「それじゃあ、レーザートラップ」


 廊下。その空間に縦、横、斜めに出現する。


「あほか!」


 少年Cは逃げることを諦めて、空書きで扉を出した。咄嗟のことで意識が目の前に持っていかれる。少年Bが出していたレーザートラップが消えると、Cは走り出す。


「ていうか、Aはどこ行ったんだよ」


 そう呟いて去っていくのを、柱を利用して隠れている少年Aは眺めていた。彼が空書きしたのは死角。建物の構造上などで見えなくなるのを利用したのだ。



 答.1

 早く食べ終われば、その分、昼休みが長くなる。


「鬼ごっこしない?」

「能力使ってやんの?」とB君は聞いてきた。


 C君はニヤッと笑う。


「能力を使わない鬼ごっこなんて、つまらねーだろ」


 言い出したやつが鬼、C君はそう言うと教室を出てしまう。その場の流れか、B君も行ってしまった。

 能力を使ってもいい鬼ごっこ。やってやる。


 運良く廊下に人は居なくて、C君の足元へ糸がピンと張るイメージを創った。何かがあると驚いて走るのをゆるめるだけでもいい、引っ掛かれ。


「そんなんじゃ捕まらねーし」


 余裕の声。続いて軽々飛び越える姿。

 アイデアを捻り出すこともなく、浮かんできた言葉を空に描く。

 レーザートラップ。縦、横、斜めに赤いレーザーが出現。


「あほか!」


 これには驚いたようで、C君は素早く何か描いていた。C君の前と後を囲うように扉が現れる。何で扉? そこからどこへ行く気なの……材質は鉄かな。

 あっ、と思った瞬間、レーザートラップは消える。意識がそっちへ持っていかれると出現させたものは消えてしまう。


「ていうかBはどこ行ったんだよ」


 そう言って再び走り出すC君。確かに、B君はどっちの方向へ行ったんだろう。階段へ行くにしても、もう少し進まないと無いし。走るの速いんだな……え? B君?

 そんな気がして振り返る。柱に隠れてた? どうやって、あ、死角か……。そんなことを考えてたら、どちらとも同じくらい距離が開いていた。



 答.2

 A君は弁当を食べ終えると、「鬼ごっこしない?」と突然に言う。


「能力使ってやんの?」

「能力を使わない鬼ごっこなんてつまらねーって」


 会話の間が開かずに、C君は悪い顔をして言う。

 言い出しっぺが鬼ということらしく、ぼくも教室を出た。

 幸い、廊下に人はいない。ここで能力を使ったら身動き取れなさそうだし、隠れるのが良い選択じゃない? 柱にすっぽりとおさまって、〝死角〟を手に描いて飲み込む。


「糸」


 A君の声がしたと思ったら、C君の足元に糸が出現した。少しでも怯めば距離は縮まるからね。


「そんなんじゃ捕まらねーし」と、ひょいっと飛び越える姿があった。


 もう少し高さがあれば、糸をくぐるか、飛び越えるかの選択で迷うだろうに。A君は優しいんだから。

 縦、横、斜め。レーザートラップが出現。へぇ、考えたね。


「あほか!」


 この予想をC君もしてなかったようで、慌てて空書きをしている。……扉なんか出して瞬間移動のような行為でもする気か?

 と思ったら、レーザートラップが消えると同時に走り出す。目眩ましを狙ったっぽい。


「ていうかBはどこ行ったんだよ」


 と言いながら、ぼくの前を通過した。続いてA君が過ぎていく。そろそろ場所を変えようとしたら、A君の振り返る素振りが窺えた。集中力はもう切れた、死角の効果はもう無い。



 答.3

 弁当を食べ終え、鞄へ片付けるとAは、「鬼ごっこしない?」と友達二人に訊ねた。


「能力使ってやんの?」


 指先まで隠れるカーディガン。パック飲料を片手にBは言う。被せるようにCが遊びに縛りを付けた。


「能力を使わない鬼ごっこなんてつまらねーって」


 CはAに人差し指を向け、「言い出しっぺが鬼な」そう言うと教室を出た。それに続いてか、Bも教室を出る。


 残された、鬼にされたAも慌てて廊下に出た。自分たち以外、人が居ないことが分かるとその場にしゃがみ指で〝糸〟と書いた。

 Cの視線が下へとさがる。Aが出現させた糸が見えたからだ。


「そんなんじゃ捕まらねーし」


 Cはさらに加速して、軽々と飛び越えた。着地も決まり、走り続ける。


「あっ――」


 何か思いついたのか、Aは空へと文字を書く。空書きした文字は、レーザートラップ。


 縦、横、斜めにレーザーを出現させた。


「あほか!」


 走っていてなかなか止まれないCは、扉と書く。ぶつかるように止まった。

 レーザートラップが消える。それを見逃さなかったCはすぐさま走り出した。


「ていうかBはどこ行ったんだよ」


 狙われ続けるC。彼が過ぎ去った柱に、Bの姿はあった。柱にくっつくようにして居るCは、建物の構造上、見えない部分を利用していた。空書きした文字は〝死角〟

 Cに続きAも過ぎていくように思われたが、Bの考えが少し甘かった。集中が切れてしまえば出現させた文字は効果を失う。

 わずかな瞬間、AとBは互いを意識した。やむなくBは、二人とは反対の方へ走る選択に出た。


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ワンシーンを長々と、 糸花てと @te4-3

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