ワンシーンを長々と、

糸花てと

問.1 クラスの女子 ゲーム

 昼休みにはいつも、二人で過ごしている女子がいる。活発な子と、もう一人は大人しい子。

 正反対な二人だが、行動するときはいつも一緒だから仲が良いなぁと思って見てる。

 放課後、日直が終わり教室の鍵を戻そうと職員室へ走った。その途中、知っている音が聴こえてきて窓を乗り出す。休憩はいつも二人で過ごしてる女子の片方がいた。自転車の荷台に座り、手にはゲーム機があった。




 答.1

 教室内にできている、複数のグループ。話す内容に統一性は無く、様々な声が音として広がる。

 その中で、あの二人だけは、その空間だけは静かで心地良い時間があるように思えた。活発な女子と、大人しい女子の二人組。

 正反対にも思える二人だが、行動するときは一緒なのが多い。そういうのを見てると、仲が良いんだなと感じた。


 教室の引き戸を閉めて、鍵をかけた。ガチャリと音が広がる廊下、自分しかいないように感じる放課後の校内。

 日誌と鍵を片手に職員室へと足を急いだ。自分も持っているゲームの音が聴こえた気がして、止まる。その音は外からだった。開いている窓から肩までを乗り出した。

 自転車の荷台に座り、ゲームをしている女子と目が合う。休憩はいつも活発な女子と過ごす大人しい女子が、そこにいた。数秒後、相手の顔は赤くなっていき、視線はゲームの画面へと引っ込む。




 答.2

 肩までの髪を三つ編み、最後はゴムでくくる。手鏡で仕上がりを見せる。片方はショートヘアで、もう一人はロングヘア。制服のスカートも片方は短く、もう一人はおそらく校則通りなのだろう、長い。

 正反対に思える女子二人だけど、移動教室や昼の弁当、なにかと一緒にいるのは仲が良い証拠だよな。


 どこか遠くから聴こえる声。日誌を書き終わり、鍵穴へ差し込み戸締り。放課後の校内はどことなく寂しさが漂う。

 早歩きから駆け足に、廊下を進んだ。思わず止まったのは、自分も持っているゲームのBGMが聴こえたから。

 廊下に人はいなかった。じゃあ、どこから? 開いている窓――…自転車の荷台に座り、ゲームに夢中になる女子がいた。髪は三つ編みのまま、その横顔はとても楽しそうで。今まで知らなかった彼女の一面に、窓から身を乗り出して話しかけていた。




 答.3

 友達が放った一言に、俺は青ざめる。日直だったことを忘れ……いや、気にもとめていなかった。

 昼休み、各々が過ごしている教室の中で、慌てて相手を探し仕事を押し付けたようになったことを謝った。

 残りは引き受けようと、日誌を受け取る。友達のところへ戻ると、話題は好みのタイプになっていた。

 スカート、制服の着こなし方はどれがいいか、真剣なやり取りが交わされている。短いスカート丈と、校則通りだと思われる長さのスカート丈。

 カーディガンを着ていても分かる、胸の大きさ。と、もう一人のほうは控えめな見た目。全てにおいて正反対の女子二人。なのだが、行動はいつも一緒のところを見かけているなと目が止まる。


 忘れていた、気にもしていなかった自分が悪い。なかなか埋まらない日誌をやっと書き込んだ。

 扉を閉めて鍵を回す。あとは職員室へ日誌と鍵を戻すだけだ。もうそれだけだと思うと、気分は軽く、いっそ走るか。廊下を勢いのままに進んだ。

 知っている音が聴こえて立ち止まる。開いている窓からだった、つまりは自転車置き場からだ。こんな堂々とゲームの音なんて、勇気あるな、誰だよ。

 自転車の荷台に座り、ゲームをする女子の姿があった。昼休み、いつも女子二人で過ごしてるうちの一人が、目の前にいる。

 普段の様子じゃ、ゲームをしそうにない。それは勝手な想像だったらしい。目の前にいる彼女はとても楽しそうで、ゲームの音も俺が知っているものだからどんな内容かも分かってて、だから単純にどれくらいゲームをやり込んでいるのか気になって窓から身を乗り出した。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る