第25話 ダイニングルーム(3)
「それで、勝則は起きてこないのか?」と達也と不満そうに言った。
「ええ、ベッドで寝てるわ」と伽耶。
「沙耶に添い寝されてか?」と達也。
「そうよ。胸にもぐりこんで寝てるわ」と伽耶。「母犬と子犬みたいに。」
「なんだと!」と達也。「怪しからん!」
「父さん、変な想像してるの?」と伽耶。
「黙りなさい!」と達也。「私はお前たちの心配をしてるんだ。」
「兄さんは私たちに甘えてるだけよ」と伽耶。「何もやましいことはないわ。」
「妹に甘えるなんておかしいだろう」と達也。
「私たちはもう子供じゃないわ」と伽耶。
「だから心配なんだ」と達也。
「意味が分からないわ」と伽耶。「私たちは兄さんのそばにいてあげてるだけよ。何がおかしいのかしら。」
「添い寝するなんておかしいだろ」と達也。
「おかしくないわ」と伽耶。「兄さんには必要なことだから。」
「高校生にもなって、妹の添い寝がなぜ必要なんだ?」と達也。
「兄さんは疲れているのよ」と伽耶。「心身ともに。」
「俺か母さんが添い寝をしてやる」と達也。「だから勝則を起こしてきなさい。」
「父さんが兄さんの添い寝なんて気持ち悪いわ」と伽耶。
「妹だって気持ち悪いだろう」と達也。
「私たちには愛情があるわ」と伽耶。「親しい兄妹の。」
「愛情なら私や母さんにもある」と達也。
「兄さんがどう感じてるか、聞いてみたらどうかしら?」と伽耶。
「もういい」と達也。「母さん、勝則を起こしてきなさい。」
「勝則は体調が悪いのよ」と麻衣。「寝かせておかないと治らないわ。」
「毎日一緒に食事をするって約束したじゃないか」と達也。
「それは私たちのことよ。勝則はそんな約束してないわ」と麻衣。
「少しは母さんの気持ちを考えてあげなさい」と達也。「勝則のことをとても心配しているんだ。」
「その話なら、昨日の昼間に散々したわ」と伽耶。
「あの時は混乱してたのよ」と真知子。
「今更兄さんになんて話しかけるの?」と伽耶。
「わからないわ」と真知子。「でも何か、あなたたちの話に入らせてくれたっていいでしょう?」
「兄さんは昨日から私たちにも何もしゃべってないわ」と伽耶。「多分ここに連れてきても何もしゃべらないはずよ。」
「そうね。きっと鼻水をすすりながら、気まずそうにご飯を食べるだけよ」と麻衣。「そして父さんが、お前がいると飯がまずくなるって言うのよ。」
「そんなこと言わない」と達也。
「今まで言ってたわ」と麻衣。
「そうだったか」と達也。
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