第24話 ダイニングルーム(2)

「私はもう勝則のことで何も言わないよ」と達也。「好きにしたらいい。ただ一つ頼みがある。」


「何よ」と麻衣。


「毎日食事を一緒にしないか」と達也。「それくらいいいだろ?」


「父さんと母さんは忙しいんじゃないの?」と麻衣。


「ちゃんと時間を作るよ」と達也。「仕事より家族を優先することにした。」


「私はいいけど、伽耶はどう?」と麻衣。


「兄さんに聞いてみるわ」と伽耶。


「決まりだな」と達也。


「親権のことは?」と麻衣。


「それは認められん」と達也。「母さんが断固反対だし、俺も認めん。」


「なぜよ?」と麻衣。


「お前、勝則にガールフレンドができてやきもち焼いてただろう」と達也。「そんなんじゃ無理だよ。勝則がかわいそうだ。」


「私は勝則のことを思ってのことよ」と麻衣。「心配でしょ。」


「それは分かるが、親権はやらん。そもそも法的に姉が弟の親権を持つことはできない。親が死別のような特別な事情がある場合だけ、未成年後見人になることができる」と達也。「そもそも、ひと月も口を利かなかった段階で失格だ。」


「父さんと母さんに言われたくないわ」と麻衣。「育児放棄してたくせに。」


「確かにそうだが、親権は親の権利だ」と達也。「簡単に譲れるものじゃない。」


「勝則が納得しないわ。」と麻衣。


「だから、好きにしたらいいだろう」と達也。


「開き直ってるのね」と麻衣。「私もう知らないから。」


「勝則の好きにさせてやれ」と達也。


「そうはさせないわ」と麻衣。「勝則はどこにも行かせないし、だれにも連れて行かせない。私も勝則と同じベッドで寝るわ。」


「勝則よりあなたのほうが問題よ」と真知子。


「何よ今更」と麻衣。「勝則は私のものよ。」


「勝則兄さんは私たちのベッドで寝るって決まってるわ」と伽耶。「これは兄さんの意思よ。」


「そんなのすぐ変わるわ」と麻衣。


「兄さんは頑固者よ」と伽耶。


「勝則は私のことが一番好きよ」と麻衣。「だから私のところに戻ってくるに決まってるわ。」


「兄さんの気が変わるとは思えないわ。今の兄さんは私たちなしで生きられないもの」と伽耶。


「そんなの泥棒猫の理屈よ。認めないわ」と麻衣。「絶対、私のベッドで寝るって言わせるわ。」


「その時はどうぞ」と伽耶。「出来たらの話ですけど。」


「あなたたち、いい加減にしなさい」と真知子。「勝則はあなたたちの兄弟なのよ。取り合うなんておかしいでしょ。」

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