第4話 団らん(1)

 勝則を寝かしつけた沙耶と伽耶はダイニングルームに入った。


「勝則はどうした?」と父の達也。


「兄さんなら私たちの部屋で寝てるわ。」と伽耶。


「起こしてきなさい」と達也。「お父さんとお母さんは勝則のために仕事を休んで家族で夕飯を食べることにしたんだよ。」


「兄さんはかなり疲れているようだから、寝かせてあげたいのよ」と沙耶。


「起こしてきて。私たちは勝則と一緒にご飯を食べたいのよ」と母の真知子。


「わかったわ。私が起こしてくる」と伽耶が出て行った。


「二段ベットをわざわざ横に並べたのは、勝則を寝かすためだったの?」と姉の麻衣。


「そうよ。」と沙耶。「今日から勝則兄さんと寝るわ。」


「なんだって。だめだ、そんなことゆるさん」と達也。


「そうよ。いくら兄妹だって、年頃の男女が同じ布団に寝るなんて駄目よ」と真知子。


「だけどこのまま誰もわかってあげなくて、行くところもなくて、家出もできなかったら、兄さん自殺するかもしれないわよ」と沙耶。


「何を大げさな」と達也。「あいつには俺がちゃんと話をした。高校の先生たちとも話をした。大丈夫だ。」


「そうは見えないわ」と沙耶。


「あの子、何か自殺をほのめかすようなことを言ったの?」と真知子。


「何も言ってないわ。でも家出するときだって突然だったでしょ」と沙耶。


「発信機を外してあげたら?」と真知子。


「それはできん。これ以上ひと様に迷惑はかけられん」と達也。


「勝則は冤罪の被害者よ」と麻衣。


「だが、世間を騒がせたのは事実だ」と達也。


「兄さんのことより、世間体が大事なのね」と沙耶。


「親には社会に対しての責任があるんだよ」と達也。


「兄さんはそんな理由に納得しないわ」と沙耶。


「昼間、俺があいつに説明した。あいつは分かったと言っていた」と達也。


「それは言わされただけでしょ」と沙耶。「とにかく、兄さんを今のまま放っていけないわ。」


「そんなにひどいの?」と真知子。


「ええ」と沙耶。「さっき添い寝してあげたら、兄さん、泣きながら寝たわ。」


「家出なんかするからだ。自業自得だろ」と達也。「しかも妹の前でめそめそ泣くなんて、どうかしてるよ。」


「それくらい疲れているのよ」と沙耶。


「あいつはすぐ泣くだろう」と達也。「いつものことだ。」


「そう思っているのはお父さんだけよ」と沙耶。

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