第3話 風呂とベッド
「ところで、ぼくの日記帳って今どこにあるの?」と勝則。
「兄さんの部屋のがさ入れの前に私たちが別の場所に移しといたから、心配ないよ」と伽耶。
「がさ入れ?」と勝則。
「始めは学校の人が来て関係がありそうなものを持って行ったの」と沙耶。「その後、警察の人が来て色々調べて持って行ったわ。」
「どれくらい持って行ったの?」と勝則。
「部屋は空っぽになるくらいよ」と伽耶。「だけど兄さんの無実が分かってから、すべて送り返されてきたの。だから兄さんの部屋は、段ボールの山で中に入れないわよ。」
「ひどい……」と勝則。「ひょっとしてプライベートなものもすべて?」
「日記以外にプライベートなものってあったのかしら?」と沙耶はうふふと笑った。
「そりゃあ、男子にはいろいろあるんだよ」と勝則。
「引き出しの裏に隠してあった動画コレクションなら麻衣姉さんが事前にごっそり持って行ったみたい。」と伽耶。
「知ってたの?」と勝則。
「ええ」とサヤ。「隠し撮りの趣味がないかどうか確かめたのよ。その時は姉さんも一緒だったわ。」
「そんな……」と勝則。
「兄さんって意外とSよね」と伽耶。
「姉さんは姉物が多いって、勝ち誇ってたわ」と沙耶。
勝則は言葉も出なかった。
「そんなわけだから、兄さんの部屋は片付けるまで使えないわ」と伽耶。「だから、私たちの部屋で寝起きするのよ。」
「散らかってても寝られるよ」と勝則。
「だめよ」と沙耶。「そんな場所で兄さんを寝かせられないわ。」
「わかったよ」と勝則。「床に布団ひくから。」
「兄さん、勝手に決めないで。ちゃんと私たちの言うことを聞いて」と伽耶。「さっきも言った通り、ベッドは用意してあるから心配しないで。」
「そう……」と勝則。
「それから、私たちの部屋で仮眠する前にちゃんと風呂に入って」と沙耶。「兄さん、少し臭いから。」
「うん……」と勝則。「じゃあ、風呂を沸かすよ。」
「もう沸かしてあるわ」と伽耶。「私がついて行くから。」
伽耶に風呂場に連れられてきた勝則は脱衣所で服を脱いで風呂場に入ると、伽耶が続いて風呂場に入ってきた。
「一緒に入るっていう意味だったの?」と勝則。
「そうよ」と伽耶。「兄さんの世話をするって言ったでしょ。」
「そこまでしなくても……」と勝則。
「背中流すから、早く座って」と伽耶。
「恥ずかしいよ」と勝則。
「早速約束を破るつもり?」と伽耶。
「ちょっとそこは!」と勝則。
「だめよ、私が隅々まで洗うから」と伽耶。「妹より姉がいいなんて、許さないわ!」
「精魂尽き果てた」と風呂を出た勝則。
「お兄ちゃん、寝かせてあげる」と沙耶。
「ありがとう」と勝則。「伽耶と交代なんだ。」
「そうよ、今日は伽耶が風呂係なの」と沙耶。「そして私は仮眠係。」
「そうなの?」と勝則。
沙耶に連れられて勝則は伽耶と沙耶の部屋に入った。部屋の奥にダブルベットが置かれていた。以前は二段ベットだったはずだが。
「これがお兄ちゃんのベッドだよ」と沙耶。
勝則は疲れが限界に達していたので、何も言わずベッドに倒れこんで布団にもぐった。その横に沙耶が横になり、布団の中でぴったりと体をつけた。
「添い寝してあげる」と沙耶。勝則は家出中の寝袋での寝心地を思い出すと、夢のようだと感じた。自然と涙があふれた。
「ここがお兄ちゃんの居場所だよ」と沙耶。「ずっと一緒にいようね、大好きなお兄ちゃん」と沙耶は勝則の肩を撫でた。勝則は泣きながら沙耶の胸にもぐりこんで眠った。
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