家の嫁はイカ臭い
寅次郎
第1話
僕たち夫婦は東京の郊外の賃貸マンションで暮らしている。
旦那、北別府勝45歳。嫁北別府千鶴子37歳。旦那は都内のメガネスーパーで働いている。
嫁いわく、僕の事を凄く優しく何に対しても寛容的で怒った所を見たことがない反面、何を考えているのか
わからないと言う。たまに家で寝る時テントで寝るし、朝出勤する時、匍匐前進で家を出るし、誰も信じない
嘘をつく
「昨日トム・クルーズに会ったよ」
などなど言われている。
僕は自分の事を変わってるなんて思った事がないけど、他人が言うのだからそうなのだろう。
僕は嫁を束縛しない。
その代わり僕もされたくない。
僕たちは結婚して13年を迎える。
子供は作らない主義だ。
今の僕があるの嫁千鶴子のお陰だと思っている。
嫁と出会ったのは今の僕の職場
メガネスーパーでの事である。
メガネスーパーの会員に入っていた千鶴子は良くメガネのテンプル部分を気にして直しに来た。
そのうち僕の方が好きになり、交際を申し込み付き合いに発展した。
嫁は僕のことを「さだまさしかと思った」と第一印象のことをいまでも言う。
メガネスーパーで出会った僕らはどちらともメガネをかけている。
メガネがメガネを見ている状態。
そんなメガネライフの僕たちは今日が給料日なのだ。
給料日は僕の大好きなすき焼きが食べられる日である。
すき焼きとイカの塩辛とビールが大好きな僕。
一刻も仕事を終えて千鶴子が作るすき焼きと塩辛が食べたい。
メガネスーパー店内
もうすぐ閉店の時間。同僚が近づいてくる。
「北別府さん給料何に遣うんですか?」
この人は出っ歯が特徴な事から僕の中で
「さんま」
と呼んでいる。
さんまに言う
「家は生活費で無くなっちゃいますよ」
今度はさんまの逆襲だ。
「そんな事言って本当は貯めてるんでしょ?」
さんまはわかってない。
何故僕たち夫婦が郊外に住んでいるのかを。
僕たち夫婦は固定費を安く抑え、スローライフを楽しむ為にそこで暮らしている。
きっとさんまは来月も同じことを聞いてくるだろう。
「ありがとうございました!」
僕は気の抜けたような声で言った。昔から大きな声を出せないのだ。
閉店である。さあ、最後のお客さんを見送って、片付け片付け。
「北別府さん一緒に帰りましょうよ」
この人は「康」と僕の中で呼んでいる人だ。
何に対しても合理化を望み、めちゃくちゃアイドルに詳しい。いつかメガネスーパーもプロデュースするんじゃないかと思うくらいだ。
僕ら2人は冷たい風吹く中、地下鉄の入り口に入った。
「寒いですね~」
僕も続いて「そうですね」と言った。
家の嫁はイカ臭い 寅次郎 @jkrowling
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