第5話
* * *
通りから少し外れた、家々が立ち並ぶ脇道を歩きながら、叶香は感慨に耽っていた。
「最近この辺り来てなかったけど、結構変わってるんだね……」
『まぁ、十年以上経ってるから。そりゃあ変わりもするよねぇ』
「うん、そうだね……でもちょっと、寂しいな。さっき行った……昔よく遊んでた空き地もなくなってるとは思わなかったし」
先程、郁の先導で訪れた場所を思い返す。幼い頃、郁と諒と遊んだ思い出の空き地は、立派なマンションが建っていた。
『気持ちはわかるよ。でも、変わらないものはないからね。……でも、変化がゆるやかなところもある。僕たちの〈秘密基地〉、覚えてる?』
「……うん、覚えてるよ」
秘密基地。その響きを懐かしく思いながら頷く。
雑木林の中のそこは、皆の秘密の場所だった。
『子どもってさ、〈秘密〉が好きだよね。〈秘密基地〉とか〈二人だけの秘密〉とか。すごく特別で、どきどきするものだった。……僕たち、三人だけの〈秘密基地〉も、そうだったね』
「静かで、日常とは別の空間みたいで、どきどきしたっけ……」
『雰囲気のある場所だったからねぇ。ちょうどぽっかり空間が空いてて、見つけた時なんて陽がうまい具合に差し込んで、きらきらして見えたし。うーん……もう暗くなるし、そこが最後かな』
「最後……」
『うん、最後。……ふふ、ちゃんと、見つけてね、叶香』
楽しげに、そしてどこか思い深げに、郁は囁いた。
叶香はそれに、焦りのような不安のようなものを抱いたけれど、口にはできなかった。
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