プロローグ

「それでは高等二年期末テストを始める。」例年通りユーリが言った。この学校は担任持ち上がり制だから、担任が毎年変わることはない。そのおかげで融通が利きやすいから、この制度は生徒に寄り添ういい制度だと思う。話を戻そう。今日のテストは、魔法は上級属性の魔法のテスト、武術は、前作った必殺技のテストを。どちらも、中はミスリルの藁人形、「さんどばっ君」に打ち込む。さて、どうしたものか。


 「次、ジャッジ。さんどばっ君に魔法を打ち込みなさい。」ではでは、さんどばっ君を溶かすとしましょうか。


 「雷槍」すぐさま、訓練場の高さ(15メートル)と同じくらいの長さの雷の槍が出来上がる。それをさんどばっ君に投げる。ただの拷問だ。雷槍らいそうは、さんどばっ君の体を貫通し、大爆発を起こす。ミスリルが、溶けるだけでなく、ミスリルの液体が飛び散った。ミスリルってこんなに簡単に溶けるものなのか?ユーリは何の反応もしなくなった。まぁいいだろう。武術も頑張ろう。




 「それでは、武術の期末テストを始める。ジャッジ、さんどばっ君に必殺技を。」よし、行くか。


 「消滅」俺は魔力を回りの密度に合わせ、余った魔力で、まいたけまいたけ、じゃなくて余った魔力を爆発力に変え風となる。一閃。さんどばっ君の首と胴が分かれる。最後に微笑んだように見えたのは気のせいだろうか?気のせい以外の何物でもない。今日は早く寝よう。




 テストが終わった。次は高等3年か。といっても、本来なら俺は高等一年。まだ14歳。ポイントはずっとスキルポイントに振りこみ続ける。新しいスキルを覚えた。同時演算(10人)だ。日常でも使えそうな能力だ。まだまだ俺は強くなる。そして、人とのつながりも増やしていきたい。まさか、高等3年で人生が変わるなど夢にも思わなかった。




 


 〈高等三年の初日〉


 うーん。いい朝だ。実力行使によって、俺は今日もオリビアの隣だ。ルンルン気分で教室に入ると俺の机に一枚の手紙が置いてあるのに気付いた。封筒にはオリビアより。とかいてある。本来ならばうれしいはずなのにとても嫌な予感がした。




 ジャッジへ、


 君は、飛び級のせいでクラスで浮いていた私に告白してくれたね。あの時のことは今でも夢に見ちゃうくらいなんだー。ジャッジ、君と過ごした毎日は本当に楽しかったよ。でも、ごめんね。もう会えないんだ。バイバイ。


 ジャンの彼女、オリビア




 ところどころ涙でにじんだ箇所がある。俺の頭はパンクした。なぜだ?俺は些細な幸せを求めただけだ。世界を征服したいとか人類を滅ぼしたいとか、そんなんじゃない。ただ愛しい人と平凡な日々を過ごしたいだけだ。なのになぜ、そんな日常すらも、もろく崩れ去ってしまうんだ。落ち着きを取り戻した俺は職員室に走る。なぜオリビアがいなくなったのかユーリに問い詰めた。なんでも、王家の五男にもらわれるらしい。だからあきらめろ?そんなことできるわけない。だから俺は冒険者ギルドで情報を集めた。




 〈冒険者ギルドにて〉


 レナさんの窓口に並んで情報を集める。


 「オリビアって知ってますか?」


 「もちろん。あなたも知ってるでしょ?」


 「はい?」


 「マリアード夫人のご息女よ。次女だったかしらね?。」


 「マリアード夫人の?」


 こんな思い出し方はしたくなかった。


 「ありがとうございました。レナさん。」


 「また来てねー。危ないことはしちゃだめだぞ。」


 予定は決まった。マリアードさんの家を訪ねよう。


 


 〈マリアード夫人の家にて〉


 「単刀直入に聞きます。どうしてオリビアは、いなくなったんですか?」


 マリアードさんは、はっとした顔をした。


 「どうして、あの子の名前を知っているの?」


 「どうしても何もオリビアは俺の彼女ですから。」


 「そうだったの。ごめんね、ごめんね。」 


 マリアードさんは泣きながら謝った。


 「どうしたんですか?」


 「あの子のお父さん、つまり私の夫は殺されたのよ。王家の五男に。」


 「ッツ、それって、オリビアをもらい受けるっていう?」


 「そうよ、あの五男はね、オリビアに一目ぼれだったの。夫は五男の指示にずっと反抗していたわ。愛娘をあんな奴にやれるかってね。でも、しょせん私たちは下級貴族。切り捨てられたのよ。五男の騎士に。それもオリビアの目の前で。そして、オリビアが15歳の時五男がもらい受けることが決まったの。半強制的に、ね。」


 「結婚ですか?」 


 「そうよ。妊娠させられて捨てられるの。」


 「いつですか?」


 「もう始まってるわよ。今日の早朝からだったはず。あの五男には何人もの妾と妻がいるの。あんな豚貴族死ねばいいのに。」


 「僕が止めてきます。さよなら。」




 〈結婚式会場〉


 そこはすぐに見つかった。きらびやかだったし、書いていたからね。王家の五男結婚式ってね。なんで名前で呼ばれてないんだろう。そんなことはいい。早く行かなきゃ。


 「それでは、新郎新婦、誓いのキスを」


 「ちょっと待ったぁ!」


 「なんだあのゴミムシは。我がせっかくこのグズ女をもらってやると言っておるのに。」


 あたりから笑いが漏れる。なんなんだこいつらは。同じ人間か?


 「オリビアは俺の女だ。」


 「ちがう。こいつは、今から俺に奉仕するんだよ。さぁどんなにしてやろうか。妊娠したら終わりだ。王都の外に捨て置けば中の子もろとも死ぬえ~。」


 ドッと笑いが起こる。俺の中の何かが切れた。


 「よく分かった。お前はもうしゃべらなくていい。死ね。」これほど明確な殺意を抱いたのは生まれて初めてだった。


 「悪魔大演舞」結婚式場を中心に禍々しい負の感情が、常軌を逸した量の魔力とともに放出される。負の感情は、悪魔の形をとり、結婚式参加者を地獄の底に叩き落す。目から血が出て、声を上げると肋骨が折れ、痛みに泣き叫ぶと臓器に深く刺さる。胸をかきむしると指の骨が一本一本折れていく。まさにそこは、阿鼻叫喚の図だった。そして、この事件は、後に首謀者不明の最恐最悪の事件として歴史書に名を残す。


 「オリビア、行こう。どこにでも。ザリバンに、行こう。」


 「ええ。ありがとう、ジャンあなたと一緒ならどこにでも。」


 阿鼻叫喚の式場からよもや、抜け出したものがいるなんて知る由もなかった。

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