玉砕からの…

「オリビア、僕は君のことが好きだ。付き合ってくれないか?」


 「   ごめんなさい。あなたを恋愛対象として見れないの。親友のままでいよう。ね?」


 はい、俺の初恋終わりました。ありがとうございました。フラれて一番言われたくないセリフ来ました。そもそも恋愛対象という土俵にすら立っていなかったという新事実、でも親友と言って慰めてくれるオリビアの優しさ。その場にいたたまれなくなった俺は走ってその場から抜け出す。オリビアの制止する声も聞かずに。


 翌日俺は学校をやめた。全ステータスポイントを魔力に注ぎこんだ。そこから50年俺は魔法を極めた。さらに20年俺は不老不死化する魔法を見つけた。そこから俺の物語は始まる。俺は魔物がうじゃうじゃいる孤島に一人で住んでいた。1日に何百体もの魔獣を殺した。魔力にポイントのすべてを注ぎ込んだ。そこから1000年、世界は朽ち果てた。神々からも見放され、魔神に支配されるようになった。魔人大陸が世界に宣戦布告した。魔人が治める世界になった。そこから500年。やっと俺は時間操作魔法を生み出した。そして、ゴルゴン英雄学院に通い始める前日にタイムリープした。巻き戻すわけだからもちろんステータスや不老不死は引き継げない。でも、世界を救ってほしい、とその記憶だけは女神さまのおかげで引き継ぐことができた。ここから俺の第二の恋愛活動が始まる。


「ここから始めましょう。一から......いいえ、ゼロから!」ということで1人称を僕に直して身なりを整える。よし、いけた。後はー、そうだ!もっとユーモアを持とう。ありがとう将宗。前世でもお前みたいに生きてれば俺ももっと楽しく生きてたのかもな。だがしかーし、今の俺にはオリビアがいる。


 〈ジャッジのーオリビア攻略講座ーこれであなたも、坂本〇人レベルに〉


 ということで、今回はオリビアを落とす方法について脳内でまとめていきましょう。


 まず初めは、「オリビアさん」と語尾を弱めに話しかけ気の弱い男の子を演じましょう。これであなたへの庇護欲は格段にUP。物を落としたり得意属性の話など自ら積極的に話をを持っていくことで、オリビアとの仲は深まるでしょうあくまでも持っていくだけ。ここがポイント!


 次に、慣れてきたらオリビアちゃんと思い切って言ってみましょう。ここからが難しいポイントです。前回の失敗では呼び捨てで言い合えるほどの仲にはなっています。ですが、恋愛対象として見られていない、そう、ここがポイント!だーかーら、つまるところ男としてのカッコ良さというのを発揮すればいいのです。男のカッコ良さって言っても別にメンタリストジョー〇の話を聞くとかではなくて、(あれ本当にモチベーション上がります。皆さん一回聞いてみてください。カッコ良いですよ)自分の強さっていうのを証明するわけです。こーこーで、モブ化していた校長の実技の授業時間でクラス最強と言われているダニエルを倒す。


 最後にオリビア、君のことが、なーんて締めくくるとオリビアは確実に落ちるでしょう。




 5限目、それでは実技を開始する。「ダニエル対ジャッジ、始め!」ダニエルは双剣使いだ。僕は、体内の血液中に魔力を張り巡らせて浸透させる。そしてすべての攻撃を一身に受ける。鮮血が飛び散り、水たまりを作りそうな勢いで血があふれる。「こんなのジャッジに勝ち目なんてないじゃない。やめてあげてよ。」オリビアが言った。僕はその声援だけでこんな雑魚双剣使いの原形をとどめなくさせてやれそうさ。ありがとうオリビア。僕は心の中で思う。そして、ダニエルの顔が恍惚に染まり、勝ちを確信した笑みを浮かべたとき、俺は唱えた。「雪月花」と。僕の血が凝固し、雪に咲く彼岸花のように月に照らされた雪の光のようにダニエルへと襲い掛かる。


 「勝者、ジャッジ」その言葉とともに俺は意図的に倒れこむ。オリビアが走ってきて介抱してくれる。タイミングを見計らって俺は言った。「オリビア、俺は君のことが好きだ。オリビア、付き合ってくれないか?」単純な言葉こそ伝わるものだ。「ええ、ジャン。」この答えを聞いた瞬間、僕は内なる俺を解放した。俺は寄声を上げながら、カニさん歩きでズボンを頭にかぶって、小躍りしそうになるのを懸命にこらえて気を失ったふりをした。2時間後、俺は眠りから目を覚ます。オリビアがずっと手を握ってくれている。なんて優しいんだ。手を洗わないとかいう次元を超えて手を嘗め尽くすことを決意した。「オリビア、ありがとう。」俺の、いや俺たちの学園生活は今から始まる。


 この時の俺の頭の中に魔神の記憶なんて片隅にすら残っているはずがなかった。それがもたらす悲劇を彼はまだ知らない。

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