第7話 パートナー

「まずは一人、メロディーにはパートナーを選んでもらう。」

急にそんなことを言われてもわからない。ふっとルーシーが頭に浮かんだが、ルーシーはここで働き続けてシェフの見習いになることが夢で、自分の夢の道へと背中を押してくれた彼女にそんなことはできない。

「俺がなる。」

大人っぽい横顔にドキッとしてしまったが、王様の前だと自分を落ち着かせる。

(さっきは慌てていて、見れなかったけど、大人っぽいな…。)「そうだな…。アルトは騎士としての免許も獲得しているし、音楽もできる。」

そうなんだ…。私は剣を持ってもどうすればいいか分からないから、途中で教えてもらえるかな?

「私、アルトさんがパートナーが良いです。」

そう言った途端、真っ赤になってしまったメロディーにアルトが優しく微笑む。

「じゃあ、決まりだな。今日、メロディーにはここで泊まってもらい、旅の準備をアルトとしてもらう。」


重いドアを背中で押すメロディーにアルトはニカっと笑いかけた。

「よろしく。」

「よろしくお願いします。」

スタスタと歩いて、王に言われた部屋に歩いて行く相棒の姿にアルトはもう一度声をかける。

「ねぇ、あの曲、もう一回弾いてくれない?」

「旅の準備をしなければいけないのではいけないのでしょう。もう2度とこの王宮に戻れないのかもしれないのですから。」

「準備の時間は明日もあるんだから、いいでしょ?」

ぐいっと顔を近づけてお願いするアルトの言葉に、渋々音楽室へとメロディーは足を進める。綺麗に塗られたドアを押すと、メロディーはピアノに駆け寄り、座る。その後ろに早く曲を聴きたくてうずうずしているアルトが立った。ゆっくりと優しい音色がピアノから聞こえる。

弾き終えると、アルトは音色の美しさ、メロディーのピアノの音のやさしさにほぉっと口から息をもらす。その息が耳に当たり、真っ赤になってしまったメロディーに、アルトが囁くように優しく語りかけ、長い髪に長い指が触れる。

「メロディー…」

温かい「沈黙」という優しい音楽が音楽室から流れていた。

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