第2話 宮殿の侍女、メロディー

「メロディーったら、メロディー!」

ぼんやりと目を開けると親友のルーシーが肩を叩く。

「お寝坊さんね!洗濯物を早く洗濯室に運ばなきゃまた鞭打ちになるわよ。」

そうだった…。洗濯物でいっぱいのかごを抱えながらハッとする。最近は前世の夢を見てばっかりだなぁ。4歳の時にここ・シューデンブルク王国のメロディーの体に私の魂が吹き込まれたんだよね。そんなこんなで10年も経って今日で14歳。

「ご、ごめん。今日誕生日だからって浮かれちゃってた…。」

「それはわかっているから。でもせっかくこの宮殿の侍女に選ばれたのよ。そんなことでまた使用人用トイレ掃除に逆戻りは嫌でしょ?」

あの悪臭で溢れる場所を思い出しながら、激しく首を横に振る。このヨゼフィーネ宮殿は王族が暮らす場所で、給料もたっぷりもらえる。人生の幸福メーターのてっぺんにいるようなものであることはわかっているけれど…。

「私はピアニストになりたいのに。」

ピアニストは楽器を購入できるほどのお金がある貴族や王族しかなれない。大好きな楽器に触れることも見ることも許されないなんて。ふぅっとため息をついた。

「夢を語っているうちに鞭打ちになるわよ。」

気づけばルーシーはもう洗濯室の前のドアを叩いている。

「待ってよ!」

ドアの中に入っていく影を追いかけた。

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