異世界で伝説の音楽の守り人になっちゃいました!?
ここあ
第1話 幻の音楽家 音海歌
「次のコンテステントは幻の音楽家の名で知られる
わずか3歳でピアノとパイプオルガンを弾きこなし、弾けない楽器はないともいわれ、数々の噂や伝説の真ん中にいる幻の少女、
心臓の音がうるさいほど聞こえる。緊張でガタガタと震える体が戻りたいと叫ぶが、今日のためにどれだけ練習したのかを思い出すと、その震えは止まる。淡い青と白のドレスがふわりふわりと揺れた。こつ、こつ、と足音が聞こえる。拍手の音が徐々に小さくなっていく。
その時、小さな悲鳴が聞こえた。歌はくるりと回って足を止めかけたが、小さなピアニストのプライドがそれを許さない。椅子に座ろうとしたその時、悲鳴が大きくなったのに気づいた。手をピアノに置くと、どうしたのかと観客席に頭を向ける。もくもくと煙が上がっている。真っ赤な炎が歌の方にやってくる。少女は固まってしまった。もう逃げ道は無くなったのだ、死んでしまう、と頭の中の声が囁く。ならば、と歌は弾くはずだったピアノの曲をなめらかに弾き始めた。
歌の魂が体から消えていくのを感じながら、火の中ではピアノの歌が聞こえたという。
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