第15話 我が家の愛猫ノンタ〜オカンとボクと、時々、ノンタ~
みなさん、猫は好きですか?
今回は、実家に暮らしていた先代の猫『ノンタ』のお話をさせていただきます。
もう亡くなったのはかなり前。
推定享年十八歳(元野良なので推定)。
直接の原因は心筋症ですが、もう寿命だったんだと思います。
母が言うには「いつ亡くなったかわからなくて気づいた時には押し入れの中でひっそりと息をひきとっていた」という。
その年のこと......。
年明けすぐに、ノンタはずいぶんと体調を崩していました。
それでもしばらくすると回復し、それからは良く
「今すぐどうということはなさそうだね」
私も母もひと安心しました。
ところがです。
そんなことを言っていた矢先にノンタは逝ってしまったのです。
その頃。
私はかれこれ七年近く実家に帰っておらず、母とも三年前に会ったきりでした。
「ノンタももういい歳だし、回復して元気になったとはいえ、これは二月にでも一回実家に帰って会っておかないとな」
やっと生活が落ち着いてそう思ったのも束の間でした。
ノンタは天に召されてしまったのです。
ノンタの訃報を聞いた時、私は悲しみよりもまず、すぐに実家に帰れなかった事を悔やみました。
本当に帰ろうと思えば帰れたはず。
私は思います。
その時会いたいと思う誰かはその時会っておかないと後悔する事になる、と。
いつどんな形で会えなくなるかなんてわからない。
自分だっていつどうなるかなんてわからない。
こんなもの、所詮は一時のセンチメンタルに過ぎないかもしれません。
目まぐるしく過ぎる社会生活においては余計なものかもしれません。
でも、私は本気でそう思ったのです。
ノンタの訃報は、母の悲しみに溢れたメールで知らされました。
そのメールを見たのは、その日の夜中になってからでした。
翌日、私は母に電話しました。
悲しみに暮れる母を想像して気持ちが重くなります。
しかし、私の暗い予想は見事に裏切られました。
電話の向こう側の母はビックリするぐらいあっけらかんとしていたのです。
ノンタについての話はさらっと終えたかと思うと、最近アンタはどうなの
......これは世の中のオカンという種の生物についてある程度共通して言えるかもわかりませんが、なぜオカンという生き物は、自分から質問しといて自分がどんどん喋るのでしょう。
私はオカンの勢いに押されながら電話ごしの会話を続けました。
もはや何のために電話したのかわからない。
やがてオカンは「あ、バス来たから電話切るね」と、散々自分が喋っておきながらブツっと電話を切りました。
私はザックリと切電されたケータイ片手に「ぬぁんだコイツ!?」と思わず呟きました。
しかしその直後「なんじゃこれ」と吹き出してしまい、妙にほっとして、不思議と安心してしまったのです。
オカンというのは本当にすごいもんだなぁ。
改めて思わされました。
後になって思えば、私に心配かけたくなかったのだと思います。
そういう人だということを私はよく知っていましたから。
後日。
私は先述の特殊生命体・オカンと久しぶりに再会しました。
ここで余談ですが......
ノンタ以前に他界していた父の晩年、家庭の経済状況はかなりよろしくありませんでした。
「今、親父が生きていればあの頃よりはもうちょっと親父の事も理解できたかもしれないな~」
久しぶりに再会したオカンへ私が言うと、パワフルなオカンは笑いながらこう返しました。
「生きてたら生きてたで大変だよ。あの時死んでくれて助かったよ。ノンタはもっと生きてて欲しかったけど」
おい!と思わずツッコミそうになりましたが、年輪の成せるジョークでしょう。
オカン強し。
こんなにめんどくさくて頼りがいのある人は他にいません。
あれ、いつのまにか猫の話ではなくなってしまいましたね(笑)。
ノンタは、私が生涯で一番愛した猫です。
愛しすぎて迷惑をかけたかもしれませんが(笑)。
そんなノンタも今は天国で父に可愛がられているでしょうか。
ちなみに、ノンタという名前は『ノンタン』に由来しています。
『ノンタン』とは、キヨノサチコ作絵の絵本シリーズ、及びアニメ『ノンタンといっしょ』『げんき げんき ノンタン』に登場する主人公の白猫の名前です。
しかしノンタは白猫ではありません。
でもそんなことは関係ないのです。
愛があれば Love is OK
好きなモノのハナシ 根上真気 @nemon13
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