第25話
それから三人はハムくんから天使化に関する具体的な情報を聞くこととなる。
それは、この世から腐った人間を消滅させるための〝ノアの
単刀直入にいえば、三本目の塔……光の塔から放たれる電子ウイルスが天使化の原因であった。
電子ウイルスに感染した人間は天使のような姿になり、理性を失い、特殊な形質へと変態する。
天使の頭部のリングから子電波が放たれて次々に感染していくという画期的な仕組みである。
「ちょちょちょ、ちょっと待ってくださいよ! 腐った人間を消滅させるのに何で全人類に感染しちゃうような仕組みになってるんですか!?」
シユはハムくんを問いただす。
『単純な話です。全人類が消滅すれば、必然的に腐った人間も消滅させることができます』
「っ……、そ、そんな……」
『腐っていない人間を特定するのは困難ですからね。最も効率的にこの世から腐った人間を消滅させるという要件を満たす方法がこちらになります』
「っ……! ふざけないでください!」
シユが叫ぶ。
『……? お怒りのようですがなぜでしょうか? ふざけてなどおりませんが……』
「っ……」
シユは唇を噛み締める。
「シユっこ…………こいつは良くも悪くも感情がないんだ……」
ラミエルがシユの方を抱き寄せる。
「…………はい。でもこいつ……こいつらのせいで……皆が……」
シユの目には涙がたまっていた。
そんなシユに、しばらく黙っていたリスナーも声をかける。
【シユ……完璧な言葉はわからないけど……これはシユが全部を抱え込むようなことじゃない……】
「っ…………うぅう」
「シユっこ……」
シユはラミエルの胸に顔をうずめる。
『ところで田中さん、あなたは電子ウイルスに感染していませんね? すなわち久世に選ばれた〝腐っていない人間〟ということです。おめでとうございます!』
ハムくんは祝福するように笑顔で拍手する。
「っ……」
シユはどう反応していいのか分からなかった。
と……、
「…………! あ、そうだ……!」
シユが急に何かを思いついたような顔をする。
と、その時であった……、
「あ、あれ……!? 撮影ドローンの調子が……調子がおかしいです……!」
【え……!?】
「ん……? うおっ、本当だな! シユっこ! これは故障か……!? なんたってこんな時に……!」
【まじか……!】
ぷつんっ
そこでドローンからの映像が途絶える。
◇
約1時間後――。
「あ、よかった……ドローン、直りましたね。リスナーさぁあん、観えますかー?」
シユが画面に向かって手を振っている。
【あぁ、観えるよ。無事でよかった】
ドローンからの映像が復帰し、リスナーは心底ほっとする。
シユとラミエルの二人はすでにサイバードリーム社の外に出ているようであった。
「リスナーさん、この後の方針についての話とその準備がしたいのですが、この辺にいい場所ってありますか?」
【え……? あぁ、近くにホームセンターがあって、そこはギリギリ、俺も憑依できるから利用してた。かなり環境は整えてある。ちなみにそこだと発信電波が強いせいか複数機同時憑依なんて芸当もできる】
「え……? それじゃあ、そこに行きましょうよ!」
「シユっこ、お前、枕は大丈夫なのか?」
のりのりだったシユにラミエルが口を挟む。
「あ……」
シユは真顔になる。
「ダメでした……それによく考えたら野菜も食べたいです。なのでやはり、一度、豊洲のホームセンターに戻りましょう」
【あぁ、わかった。ん……? ところで、さっき、この後の方針についての話と言っていたが、方針がもうあるのか?】
「えぇ……! 行きますよ! 〝三本目の塔〟へ……!」
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