今日も三郷さんは喋らない！

第1話 三郷さん

　同じクラスメイトの三郷（さんごう）さん。彼女は喋らない。

　というか、自己紹介の時に黒板で

「私は喋りません！ただし反応はします！」

　と宣言。

　最初はおかしいヤツか、単にコミュニケーション取るのが苦手なヤツかと思っていた。

　――が違った。なんというか、三郷さんオーバーリアクションしながらクラスメイトと楽しく普通に談笑。

　ボクも、一度だけ三郷さんに話しかけたことがある。

　ただ、上手く話せず三郷さんは口を大きく開けた、まさに「ポカーン」状態。

　そのまま「ごめん！なんでもない！」と恥ずかしさで逃げるように三郷さんの席から退散。

　それ以降、三郷さんとは気まずさもあり、事務的なこと以外はコミュニケーションを取っていない。

　そんな三郷さん。学校の外に出ると人が変わったかのように普通に喋る。

「帰りにケーキ屋寄りたい！」

　とか、ごく普通の学生がするような会話。そこで三郷さんの声を初めて聞いた。

　…しかし、校内では相変わらず喋らず手話やリアクション・筆談でコミュニケーション。

「外では喋るのに学校内では、手話とか不便だろ！」

　とボソッと呟いたら、三郷さんから睨まれた。そして「余計なことを言うな！」とも受け取れるものすごい形相。

「しゅ、しゅびまぜーん(すみませーん)」と泣きながら謝罪して、その場をまた退散。