第4話・組織のボスなのにこの扱いは酷くね?〈四天王からの愛が重すぎる!!〉

 深夜の東京都心に現れた羊の頭を持つ悪魔みたい相手。

 名前は羊悪魔にしておくが、コイツの体は頑丈らしく突撃銃の弾丸を受けてもピンピンとしている。


「違法アイテムでもここまで強くなるなんて……」

「足を止めるなポニテ女!」

「ぐっ、礼は言わないわよ」

「はっ! そもそもお礼を言われる立場じゃねー!」

「アイツら意外と相性がいいのか?」

 

 ポニテ女の戦い方は刀を使った一撃離脱。

 対するブラッドは高い耐久力を使ったゴリ押し。

 戦い方のタイプはかなり違うが、相性はいいのか自然と連携が取れている。


「ごおぉ!」

「ちぃ、ボス!」

「わかってる! 黒鋼の鎖!」


 流石にこのままだとやりにくい。

 相手の力はまだ未完成で被害はそこまでてないが、能力を使いこなされるとかなり厄介になりそうだな。

 ……なら、ここは一気に決めにいくか!


「お前らは足元を集中攻撃してくれ!」

「おうよ! って、コイツ翼を生やしたぞ!」

「まさか飛ぶ気なの!?」

「だろうな!」


 ただその動きは想定内だ。

 魔法少女を人質にする時に作った黒鋼の剣を空中に浮かせ、羊悪魔の体を攻撃していく。


「ぐおおぉ!?」

「こ、これがカーディナルのボス……」

「まだ終わってないぞ!」

「ぐっ!? それくらいわかっているわよ!」


 どんだけ頑丈なんだよ。

 相手の翼は潰したが本体はだいぶ頑丈で大きな両手剣を振り回している。

 このままだとジリ貧っぽいし、さらに被害が広がるよな。


「仕方ないか……」

「ちょっ、なんでアナタが前に出るのよ!」

『「ボス!!」』


 悪いがさっさと終わらせる。

 地面に両手剣を打ち付けている羊悪魔へ対し、俺は黒鋼で大盾を作り出しガード。

 そのまま相手の攻撃をずらしながら、サブで作った刀剣を勢いよく引き抜く。


「くたばりやがれ!!」


 我流剣技、空月くうげつ流・天翼!!

 鞘から勢いよく引き抜き居合斬りをする技だが、シンプルゆえ使いやすい。

 天翼を受けた相手は右腕が真っ二つになりバランスが崩れたので、俺は相手の反撃に備えてバックステップを踏みながら二人へ指示を出す。


「一気に勝負をかけるぞ!」

「おう!」「ええ!」


 片腕を持っていければコッチの物。

 ポニテ女性が放つ気合いが入った一撃は羊悪魔の左足を切り裂き、背中の翼を使い空中からメテオの要領で頭へ剣をぶっさすブラッド。

 追加の攻撃を受けた羊悪魔はそのまま地面に倒れ、そのまま動かなくなった。


「これで決着かしら?」

「さあな? っと、後はお前らに任せる」

「ちょっ!? ここで丸投げするの!」

「「もち!」」


 いやだって面倒だもん。

 こちらとら秘密結社として働いているのに、表の処理までするのは嫌だしな。

 羊悪魔の攻撃でボロボロになってるポニテ女性を尻目に、俺とブラッドは互いに眼を合わせてアイコンタクトをする。


「アンタ達……。ここでぶった斬ってあげようかしら?ー

「それが出来るならな」

「ぐっ!?」

『あ、ボス。追加の魔法少女部隊がそちらに近づいてます!』

「了解」


 流石にこの状況は分がいいんでな。

 ポニテ女性一人ならなんとかなるが、他の奴らがコチラに来たらわからない。

 ならとっとと帰るために、俺は通信でエクシアとタナトスを呼ぶ。


『てなわけで撤収!』

『『『『はーい!』』』』

「ま、まて!」

「いやです!」


 待てと言われて待つ悪党はいません。

 エクシアの能力である転移を使い俺達はそのまま拠点に戻っていく。

 そして敵対組織・ガードレール襲撃事件は次の日にニュースとして流れた。


 --


 次の日のお昼。

 地下の拠点ではなく上の屋敷に戻ってテレビをつけると、昨日襲撃したガードレールの件が大々的に報道されていた。


『しっかしガードレールを襲撃した方々は何者なのでしょう?』

『情報では駆けつけた魔法少女部隊が鎮圧したとなってますが、真相は謎ですね』

「襲撃したのはウチです」


 ついでにガードレールの拠点にあった大金はウチが使います。

 宝くじの一等よりも儲かるやり方なので笑ってると、髪を整えたブラッドがマグカップを差し出してきた。


「お疲れさんボス!」

「いやいや、お前こそ」


 しっかし他の奴らはまだ寝てるのか?

 いつもなら起きて来るはずなのに、今日はやけにねぼすけだな。

 ブラッドと二人で屋敷のリビングでのんびりしていると、階段の方からドタドタと慌ただしい足跡がする。


「よくもやったわねブラッド!!」

「なんのことかな?」

「アンタ私達の飲み物に睡眠薬を仕込んだでしょ!!」

「へっ?」

「おいおい、脳筋のブラッドがそんな手の込んだ事をやるわけないだろ」

「……じゃあなんでこいつだけ起きてられるのよ!」

「はあぁ!? 言いがかりしてくんな!」


 昨日の出来事。

 確か拠点に戻ってきた後、結果報告や情報整理で話していたけど……あ、確かブレインが持ってきた暖かいお茶を飲んでたな。


「多分だけど犯人は飲み物を用意したブレインじゃね?」

「えっと、そうなるとあの女はオレも眠らせるつもりだったのか?」

「あくまで俺の予想はだけどな」

「「よし、ぶちのめそう」」

「待って待って!?」


 コイツらが異能を使うと屋敷が吹っ飛ぶ。

 それをすると流石にやばいので二人を止めつつ、エクシアを強引に起こして全員でブレインの部屋に突撃。

 最終的に本人が自白したので、そのままお仕置きを決行していく。


「あ、あの、ボス以外にお尻を叩かれたくないのですが……」

「うるせぇ!」

「ぎゃふ!?」


 バチーンと破裂音が部屋の中を響く。

 ブレインは寝巻きのズボンとTバックを下げられ、お尻丸出してお仕置きを受けている。

 というか、力自慢のブラッドの一撃はお尻の肉が凹み叩かれた本人は涙を流していた。


「な、なんで失敗するのよ、「もう一発!」きゃあ!?」

「ふふふっ、悪い子猫ちゃんには厳しい躾が必要よね」

「うんうん」

「あのー、みなさん? ボス助けてください」

「悪いが無理!」

  

 とりあえずブレインのお尻には死んでもらおう。

 すでに真っ赤に腫れ上がってるのに、女子ズ達の厳しいお仕置きを受けた結果。

 倍くらいに腫れ上がったブレインのお尻へ、金属パトルを振り下ろす。


「ぎゃあ!? ご、ごめんなさい!」

「おう、ちゃんと反省しろよ」


 徹底的に躾ないとな。

 異能者にも効く睡眠薬を作ったブレインに対し、お尻叩きを徹底。

 最終的には四時間くらいのお仕置きして他の三人は気が治ったらしく、最後は本気で涙を流しているブレインが残った。


「ぼ、ボス、見捨てないでください」

「ん? なんで見捨てると思ったんだ?」

「いやだって、わたしはやらかしてばかりだし」

「おいおい、お前がいなくなったらめっちゃ困るんだよ」


 ネガティブモードのブレイン。

 彼女をヨシヨシしながら自分で作り出せる優しめの声で言葉を返す。

 

「アイツらだってお前を嫌ってないだろ」

「え、あ、そうならいいのですが」

「そうそう! てか、俺達の目標はまだ途中だろ」

「……ふふっ、ほんとボスは優しいですわ」


 俺達の目標。

 社会から冷遇されていたコイツらと共にふざけた現実をぶち壊す。

 別に社会崩壊が狙いではないが、国民の意識改革に近い。


「吸血鬼のブラッド、女王様のタナトス、転移のエクシア、超高速処理&天才ハッカーのブレインお前。そしてボスである黒鋼のファントムの五名は切ってもきれない腐れ縁みたいな感じだろ」

「ぼ、ボス! あ、このまま襲ってもいいでしょうか?」

「うん、いい雰囲気がぶち壊しだよ!」


 ほんと締まらないなー。

 というか、部屋の外にいる三人娘からの殺気がすごいし、というか部屋のドアがガダガタ言ってません?


「ブレイン! ボスは私達が分け合うと決めたじゃない!」

「まだ部位は決まってないがな!」

「あ、ボクは顔がいい!」

「何その話!?」

「そんなの早い物勝ちですわ!」


 ちょま……。

 コチラに飛び込んでくる我が四天王達。

 コイツらと一緒にいると楽しいが、それと同時に愛が重たすぎる。

 

「ボス命令、一旦落ちつけ!」

「「「「やだ!!」」」」

「ええ!!」

 

 ボスの命令を却下する四天王。

 最終的に落ち着くまでコイツら盛り上がる俺だったが、なんだかんだコイツら一緒にいるのが気持ちいいな。

 そう思いながら今日も一日幸せに生きていくのだった。

 

〈お知らせ〉

・計画段階ですが、この小説の長編版を調整してます!


 

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スパンキングしたら、いつの間にか最強の秘密結社が出来上がっていた 影崎統夜 @052891

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