第2話・ウチの四天王はキャラが濃いよな……
合法ロリ……金髪縦ロールの少女・エクシア。
ウチの中では最年少だけどえぐい異能を持つ彼女は、両手に抱えた食材を地面に起きコチラに抱きついてきた。
「ボスただいまー」
「お、おう、おかえり」
「むふー! 指示の通り政府の魔法少女は殺さず叩きのめしたよ」
「そりゃよかった」
あのー、貴女は今年で十九歳ですよね。
俺と一歳しか変わらないがエクシアが、小さな子供みたいな反応をしてくる。
うん、彼女の褒めてアピールがすごいな。
「敵を極力殺さないなんてウチのボスは優しいぜ」
「でもその優しさでアタシ達はマスターに助けられたわよね」
「べ、別に悪いと言ってないだろ!」
「どうかしら? あ、私も頑張ったから褒めてよ」
「ちょっ!? この痴女は何をいうとるんですか!?」
「あら、何か言ったかしら?」
ほんとコイツらは仲がいいな。
秘密結社・カーディナルのメンバーは
黒髪セミロングで長身美人こと頭脳担当・ブレイン。
赤髪ボブカットでガタイのいい美少女こと戦闘担当・ブラッド。
銀髪ロングで豊満な胸と引き締まった体を持つ二十代前半の美女こと戦闘&尋問担当・タナトス。
金髪縦ロールで合法ロリである後始末担当・エクシア。
最後に中世の仮面舞踏会に出るような銀仮面に黒いマント、カーディナルのボスをしている俺・ファントム。
組織人数としてはだいぶ少ないが、彼女達は専門分野では超一流のエリート。
というかカーディナルを結成してから三年たつが、政府が尻尾を掴めないレベルで優秀なんだよな……。
「お前らは元気だなー」
「もちもち! あ、ボス。ボクと一緒に夜ご飯を作ろう!」
「別にいいけどタナトス達はどうする?」
「私は食べる専門だし、こいつらと楽しまないとね」
「「ひいぃ!?」」
「あー、はい」
鞭で縛られて吊るされているブレインとブラッドが涙目になっている中、エクシアがルンルンで手を引っ張ってきた。
「じゃあ行こう!」
「えっと、アイツらは大丈夫か?」
「能力者で頑丈だから気にしなくてもいいよ」
「え、あ、あの、わたしはマスター以外の攻めは嫌なのですが?」
「なら私の攻めで気持ちよくさせてあげるわ!」
「ちょっ!? オレまで巻き込むな!」
どんまいです。
首根っこを掴まれて引っ張られる美少女達。
絵面的には悪くないが、それはそれとしてやばいような?
とりあえず後でフォローを入れることを考えつつ、今はエクシアと共に夜ご飯へ向けた準備を進める。
「ボスどうしたの?」
「ん、ああ、少し別件を考えてただけだ」
「それって新しい任務?」
「みんなが集まった時に話すよ」
「了解ー」
今回の任務は政府が増強した魔法少女達の調査。
コイツらを放置すると認識阻害があるとはいえ、秘密基地がバレたり動きにくくなる可能性がある。
内心でコレからの対策を考えながら、エクシアと共に地下室にある調理場に向かう。
--
エクシアと調理を初めて一時間半後の十九時すぎ。
料理が完成して司令室に持って行ったタイミングで、ツヤツヤになったタナトスがボロボロになった二人を引っ張ってきた。
「いやー、楽しかったわ!」
「お、おう? まあタナトスが元気そうでよかったよ」
「でしょ! あ、マスターはコイツらメンタルケアをお願いね」
「了解。って、二人は生きてるのか?」
「「ははは……」」
「たぶん? それよりもご飯を食べようよ!」
「ちょっ!? オレの分も残してくれ!」
「あ、復活したね」
やっぱり肉体面だと吸血鬼の異能を持つブラッドが強いな。
早めに復活したブラッドが定位置に座るが、もう片方の被害者であるブレインはヨヨヨと泣いていた。
「わたしはボスに運んで欲しいです」
「ん、ああ、いいよ」
「やっふぅ!? ではお姫様抱っこでお願いしますねー!」
「なん……だと! おい次はオレも頼むぞ!」
「ボクもー!」
「みんな元気ね。あ、もちろん私もお願いね」
「お前ら……」
あの、一応俺はボスですよ。
まあでもこいつらに裏切られたら組織壊滅どころじゃ済まなくなるので、フォローや労りと考えてメンバーを椅子に運んでいく。
「と、とりあえず任務お疲れ様!」
「「「「お疲れ様!!!!」」」」
「でだ、今回の魔法少女はどうだった?」
「戦闘面では特に歯応えはなかったけどちょい厄介な能力持ちがいたな」
「ほうほう。それってどんなやつ?」
「転移系」
「……マジかよ」
転移系とか相手にしたくないタイプすぎる。
基本的に異能は常時発動型、任意発動型、天然発動型の三つに別れているが、ごく稀に希少型が現れるのが厄介。
「まあでもわたしがトラウマを刻み込んだから大丈夫そうよ」
「ただタナトスの場合は厄介なファンが増えないといいですが」
「……それを言ったらおしまいよ」
「マスターご飯をおかわり」
「お、おう」
エクシアのお茶碗にご飯を盛ってと。
ボスのなのに家政夫な感じがするが、今更なので苦笑いを浮かべる。
というか、俺のやっている事って家政夫か大家では?
ご飯を盛ったお茶碗を満面な笑みになってるエクシアに渡しつつ、本来の会話へ耳を戻っていく。
「
「そうそう! てか、誰がオレの事をポンコツ系脳筋美少女ってつけたんだよ!」
「さあ? てか、ブラッドもご飯のおかわりはいるか?」
「いる!」
ですよねー。
ブラッドのお茶碗はエクシアのやつよりも一回り大きいが、中身が空になっているのでご飯を乗せる。
そのタイミングでタナトスが唐揚げをむしゃむしゃ食べながら、色っぽく舌で唇を舐めた。
「それで
「ははっ、いつもと同じに決まっているだろ」
「「「「了解」」」」
能力的に昼よりも夜が動きやすい。
まあでも魔法少女の警戒も高まる時間なので少し動きにくいか。
というか、今回聞いた転移系の魔法少女に注意した方がいいかもな。
自分の中で対策を考えていると、ナフキンで優雅に口を拭いたブレインがニヤリと笑う。
「ではわたし達はいつもの配置でよろしいのですか?」
「いや……どうも今回は
「へぇー、このオレに匹敵するレベルの敵が現れるのか?」
「まあでもマスターの予想は的中しやすいから気をつけた方が良さそうね」
「うんうん! あ、ボクは緊急脱出の準備を整えておくよ」
「頼んだ」
転移系の能力を持つエクシア。
戦闘面では他の三人に一歩劣るが、便利な能力のお陰でだいぶ助かっている。
エクシアの頭を撫でていると、他の三人から肉食獣みたいな視線が飛んできた。
「「「じいぃー」」」
「効果音をつけなくても……」
「いやだって羨ましいもん」
「タナトスさんのキャラが崩壊した!?」
「ふふっ、こうなったらわたし達でボスを監禁したいですわ」
「なんか現実的にされそうなやつがきた!?」
「ならボスの最初はオレがいただくな!」
「「「意義あり!!」」」
「もうやだコイツら……」
秘密結社のノリが大学のサークルなんだけど?
しかもガチで監禁されそうな雰囲気なので、背中に冷たい汗がダラダラと流れる。
うん、このままだと不味いので本題に入ろう。
対立する四天王を抑えるために、コホンとワザと咳をして真面目な表情を浮かべていく。
「話を戻すけど今回の作戦を伝える」
「ん? オレはいつも通り暴れた方がいいんだよな」
「それはそうだけど今回の目的は
「「「「了解」」」」
よし、コレでなんとかなった。
ごまかせた感じはするけどジト目がすごいので頬を引きつらせる。
「てな訳で二十時から作戦を始める!」
「はーい! あ、わたしはみんなのバックアップをしますわ」
「じゃあ私は敵組織の奴らの尋問ね」
「ボクは保険と後始末!」
「ボスである俺の出番は?」
「「「「ボスは後ろでどっしり構えていて!!」」」」
「あ、はい」
い、いちおう戦えるんだけど?
ただ基本的にコイツらが無双するおかげで出番が最後だけになり、カッコつけて終了もよくある。
ボスなのに出番がないのは少し悲しいが、四天王の強さが証明されるのはいいのかな?
まあでも、コイツらが元気なのはありがたい。
色んな事を思ってしまうが今は無視して食べ終わった食器を片付け始めるのだった。
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