第4話 私が姉で、ゆうちゃんが妹

 あれから3日ほど経過したけれど、雅は話しかけてこない。話しかけても無視される。

 そもそも目を合わせてくれない。

 そこまで怒ることをしてしまったのか?私は。

 パンツを穿いたくらいで。窃盗未遂とも言えるかもしれないけど。

 そんな何日も穿きつぶしたわけでもない。

 幼馴染だよ?ほとんど姉妹みたいなもんじゃん。あんなに嫌な顔されたら私だって傷つくよ。


「ねぇゆうちゃん。誕生日いつだっけ?」

「唐突だね。私は12月だよ」

「じゃあ私の妹ね」

「ん?」


 私の前に座るボーイッシュな見た目の彼女は、少し困った感じの顔をしていた。

 困った顔も可愛くて、前髪を整える仕草も愛らしく、私はカッコいい女の子を困らせるのも悪くないなと知ってしまう。


「ねぇゆう。私、間違えてゆうのパンツ穿いちゃったんだけど、いいよね?」

「え、嫌かな」


 彼女の口からは、冗談には感じられない声色で、短く答えた。

 私は何か言い方がおかしかったのだろうと思い、もう一度聞いてみた。


「ゆうのパンツ穿かせて?」

「やだよ」

「ねえ!ゆうちゃんは今何!?妹!姉妹!同い年!穿かせてよ!!」

「えぇ……今姉妹の設定だったの?」

「そうだよ!誕生日聞いたじゃん」

「んー姉妹なら……」


 彼女はちゃんと真剣に考えてくれる。想像するために目を閉じて集中するその姿が、私を楽しませてくれる。

 その真剣な表情に、思わず微笑みがこぼれた。


 今、彼女の頭の中はパンツでいっぱいなんだと。


「姉妹ならいいのかな?私一人っ子だし分からないよ」


 それでも私の欲しかった答えは返ってこない。


「そっかぁ~」

「何?ニヤニヤして」

「ゆうちゃんはおませさんだなぁって。頭の中パンツだらけにして」

「ちっちが!それは奏がっ!……バカっ」


 彼女は顔を赤くして私の前から逃げてしまった。


 高身長にスラっとしたスタイル。男子と間違われてしまうほどのカッコいい容姿。

 でも最後に見せたその顔は、私なんかより女の子らしくて、女子からも多くのファンを集めている理由がよくわかった。

 これがギャップ萌えというのだろう。

 クールでボーイッシュな彼女だって、女なんだ。








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