第10話 Persona
☆
私は耐えられない。
これ以上はもう。
まだ愛しい人を裏切るなんて。
そう考えて私は表に出た。
それから彼達の元に向かう。
「待て。朧。どういう事だ!」
「私、は。あくまで洗脳されている。せ、性奴隷にされている。お願い。信じて」
「何だそれは!?どういう事だ!?」
私は勇気を振り絞り彼に訴える。
すると彼の横に居た彼女。
つまり星空さんが私を複雑な顔で見る。
それから言葉を発した。
「貴方がどの様な形であれ。私達を裏切った。それから貴方は逃げなかった。それを考えると同情は出来ない」
「お、オイ。星空...」
「お兄ちゃん。貴方は鬼畜と思うかも知れないけど私はこの人がどうあっても許せない。だから私は鬼畜だろうが何だろうが構わない。だから私は彼女を許さない」
そう、言われた。
それから彼女は私を警戒する様に見据える。
私は頷いた。
そして私は涙を浮かべる。
「私は鬼畜だろうが何だろうが構わない。だけどお願いします。お願い。晴人はあの女に近付かないで...」
「...」
私は必死に訴える。
すると晴人は無言でスマホを取り出す。
それから電話をかけ始めた。
多分相手は...楓だ。
そう考えながら晴人を見る。
「もしもし。晴人くん」
「楓。お前...とんでもない事をしてないか」
「...とんでもない事?」
「朧に何をしたんだ」
「あー。気が付いたんだね」
「...下手すればお前との仲が断絶するぞ」
「そうかな?私はそうは思わないよ」
「...」
恐怖。
そう考えながら応えを待つ。
すると彼女はニヤッとした様な感じで応えた。
「もしかしてその場に彼女が居るの?朧が」
「...朧じゃ無い。今はお前自身に聞いている。どうなんだ。答えろ」
「...晴人くんのエッチ。あはは」
「楓。ふざけている場合じゃ無い。最悪の場合、マジにお前との縁を切らなくてはならない。お前のやっている事は俺には到底理解が出来ないから」
「そうだね。分かった。じゃあ答えるね。私は貴方の彼女を寝取りました」
すんなり答える。
私は衝撃を受けてから彼を。
晴人を見る。
あまりの衝撃。
つまりハンマーで勢いよく頭でもぶん殴られた感じの表情を見せた。
私は目を逸らす。
「...楓。お前知っているか。俺はお前を強く信頼していた。大切な人だ。それが何故こんな事に。何がしたいんだお前は」
「私は言った通りだけど君が好き。どんな手段を使ってでも独占したい。それは私の愛だ。慈愛だ」
「...お前のせいで朧との関係が壊れた。お前を。深く深く信頼していたんだが」
「私は悪い事だとは思ってないよ。だって私はあくまで貴方しか見てない。朧より私を見て。楓を見て」
「...」
その言葉に晴人はギリッと歯を食いしばる。
それから無言になってから顔を私に向けてから楓を見る様に其方に向いた。
そして彼は言い放つ。
「お前とは絶好だ。もう話しかけるな」
「まあどっちでも良いよ。私は。でもどっちを採択しても私は貴方を追うけど」
「...お前。少しは反省しろよ...何なんだよ一体!」
「反省?そもそも私は悪い事をしてないよ?どういう事?」
「楓。もう昔に戻らないのか?俺達は!」
「昔から何も変わらずだよ。私は大和楓だよ。ね?晴人くん」
私はビクビクしながら電話を聞く。
すると晴人はまた無言になる。
それから晴人は「...」となってから顔を上げてから答えた。
「分かった。お前とはこれまでだ。有難うな。今まで世話になった」
「私は間違いなくこれからもお世話になります。逃がさないよ。晴人くん」
「...俺達の関係は終わった。破産した。...もう関わるな。お前の行動次第ではストーカー紛いになる。そうしたらお前は終わりだ。警察にも言うぞ」
「そうなんだ?かつての大切な友人をそんなに簡単に切り捨てるの?サイテーだね」
「...」
無言にまたなる晴人。
それから回答を待っていると晴人が切り出す。
楓に対して諭す様に言う。
「...楓。あくまで俺はお前を友人だと。そう認識していた。お前という奴の裏切りは朧が裏切った時より重たい」
「?...何で?」
「お前は感情を操れる様だが其方については疎いんだな。つまりはお前は朧以上の極端な裏切りをしたって事だよ。分かるか」
「私が朧より最低って事?酷いなぁ」
「酷いのはお前で。最低なのもお前だ。まさかこんな月末になるとは思わなかったよ。マジに最低の最悪だ」
「...」
「お前の人格はペルソナだ。あくまで許されない事をしたんだ。確実に反省してもらわないと困る」
「ペルソナ...」
「今のお前にこの思いが伝わるかどうか知らないが。俺はあくまでお前を気にかけていた。間違い無く。だがお前はそれすら。いや。全てを裏切った。怒りを打つけるとかそんなんじゃ無いけど俺はもう疲れた。真面目にな。畜生だわ」
「...まあペルソナかもね。どっちでも良いけど。私は晴人を狙うから。じゃあね。用事があるから。朧と仲良くしてね」
晴人はそのまま悪態を吐いた。
それからイラついた様な感じになる。
私はその姿を見ながら「...」となって晴人を見つめる。
私達は暫くその場に立ち尽くしていた。
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