第7話 Raid
翌日になって俺は起きてから学校に行く為に準備をしていると。
星空がお弁当を持ってやって来た。
それから渡してくる。
「はい。お兄ちゃん」
「え?これは何だ?」
「どうせお昼にロクでもない物しか食べてないお兄ちゃんにお弁当を作りましたー。寮に帰ったりするから毎日は無理だけど」
「...マジか...」
「そう。ラブ弁当」
「...い、いや。それは良いけど。...成程な。有難うな」
俺は星空を見る。
それから柔和な顔をしてから家を出た。
星空は今日、寮に帰るそうだ。
まあ帰りたくはないって言ってたけど仕方が無いよな。
思いながら歩いていると。
「はよーさん」
「...おう。智和」
「ん?どうした。何だか顔が冴えてんな」
「何だそれは。俺が普段は冴えてないという言い方になるぞ」
「そうじゃね?( ^∀^)」
「ぶっ飛ばすぞコラ」
友人の男子生徒。
羽野智和(はのともかず)。
四角い黒縁眼鏡にそばかすの男。
まあ良い奴なんだけどおちょくりがな。
「まあ冗談は置いておくが。マジにどうしたんだ」
「...ああ。実はな。義妹が...弁当作ってくれてな」
「あ?」
「...あ?って何だ」
「(゚∀゚)殺すぞ?何だそのラブストーリーはよ」
「...」
「オイコラ。貴様。何で無言になるんだ」
「すまん。何でもない」
「よし。クラスにばら撒こう。この噂を」
「止めろ馬鹿。特に楓に知られたら関係性が崩れる」
「知るかコラ。何で貴様の様な冴えない男に女子が群がるんだ」
俺に対してそう悪態を吐く智和。
それから移動する俺達。
すると智和は溜息を吐いた。
「まあでも。...お前がそれだけイイ男って事だよな」
「知らんな。自覚は無い」
「あー。そうなんか?」
「そうだな。俺は...良い男じゃない」
「...親父さんの事なら仕方が無いと思うぞ。救急車を呼べる年齢でも無かったろ」
「...まあな」
人の命を見捨てざるをえなかったあの記憶。
俺はその記憶をたまに思い出しては後悔をする。
そして...絶望する。
だけど智和も。
星空も美奈子さんも楓も。
俺を励ましてくれる。
「...俺は何というか幸運だよな」
「俺がお前の立場ならとっくの昔に自殺しているとは思うが。お前が乗り越えたその痛みは誇って良いと思うぞ」
「...だな。すまない。智和」
「おう。それなら弁当少しだけ分けてくれ」
「やらんぞ。お前。義妹居るだろ貴様だって」
「あのな。義妹も妹も。普通は懐かない。だから分かるかな?この気持ち。弁当なんて愛想も無いしな」
「まあ...そうだな」
そして俺達は学校に到着する。
するととんでも無い事が起こった。
それは...楓が話しかけてきた。
「晴人くん。お、おはよう」
「...!?...か、楓?どうした。学校で話すなんて珍しいな」
「...あ、うん...その。...晴人くんって...仲の良い女子が居るの?」
「あ?お前以外で?」
「そ、そう。嫉妬って訳じゃ無いんだけど。少し聞いてみたくて」
「...そうだな。義妹かな」
その言葉に楓の表情が一瞬無くなった気がした。
だけど直ぐにまた笑顔になる楓。
今の表情は何だ。
そう思いながらも楓は挨拶をしてそのまま駆け出して行く。
「...珍しいな。楓ちゃんが話しかけるなんて」
「そうだな。学校では珍しいかもな」
「お前。楓ちゃんも落としたか?」
「そんな訳あるか」
そう言いながら俺達はそのまま教室に向かう。
それから教室のドアを開ける。
そして授業を受ける為の準備をしていると机の中に手紙が入っているのに気が付く。
俺はビックリしながらその手紙を見る。
白色の封筒で、晴人くんへ、と書かれている。
差出人が...楓?
「楓?なんで?」
俺はよく分からないまま見渡す。
すると楓が小さく手を振っていた。
その姿に?を浮かべながら俺は開けてみる。
そして読んでみる。
(放課後に屋上で待っています)
何が起こっているのか分からなかったが。
取り敢えずそれだけしか書かれてなかった。
どういう事なのか。
これではまるで。
いやまさか。
「...楓が告白?そんな馬鹿な、か」
俺は思いながら首を振る。
それから俺はその純白の手紙をゆっくり仕舞う。
そして俺はそのまま準備を再開した。
☆
放課後になったので智和に断りを入れてからそのまま屋上に向かう。
昼も楽しんだ。
今日は一日楽しかったのだが。
メインイベントの様な気配がした。
俺はドアノブをゆっくり捻ってから屋上に入る。
「オイ。楓」
そう呼びかける。
するとドアがいきなり閉まった。
鍵まで閉まる。
それから俺は勢い良く押し倒された。
「か、楓!?」
「えへへ。ようやっと捕まえた。晴人くん」
「ま、待て。何をしている!?」
「大好きな人。私が唯一無二だと思っている人」
「は?は!?」
「私ね。晴人くんが好きなの」
「...え!?」
俺は衝撃を受けながら目の前の楓を見る。
楓は何を思ったか自らの顔を俺の顔に接近させた。
それからそのまま楓は俺に跨ったままキスをしてくる。
それもこれは!?
「...うぐ!」
「えへへ...ちゅー」
「グゥ!」
濃厚な大人のキスだった。
所謂、舌をぶち込んでくるタイプ。
俺は楓を突き飛ばす。
それから俺はヨロヨロになりながら立ち上がる。
「な、何をしている」
「言ったでしょ。私、晴人くんが大好きなんだよ。昔から」
「が、学校だぞここは」
「えへへ。そんなの関係無いよ。場所がどこであれ。私は貴方を襲う」
楓の目はマジな感じだった。
うっとりしており興奮している様に見える。
俺は楓を見てみる。
「か、楓。俺は今、そういう気分にならないんだ」
「...そうだね。私も思う。そういう気分にはならないだろうなって。だけど私は...出会った時から好きなの」
「...そうなのか」
「私はどうあれ。貴方が好きだから。これから徐々に落としていくつもりだよ」
そう言いながら楓は俺を見る。
それから満面の笑みを浮かべた。
俺はその顔に何だか恐怖を覚えた。
何故だ。
楓という大切な人にこんな気持ちを覚えるとか。
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