第6話 Split in two

お兄ちゃんの事は大好きだが一応、場を弁える時は弁える。

今日、お兄ちゃんの部屋に来たのは。

これからの事を話す為だ。

それは何かといえば簡単である。

恋愛以外でこれからの話がしたい。


「お兄ちゃんの部屋に入るの久しぶりだね」

「そうだな。...丁度、お前も受験生で忙しいもんな」

「そうだね。アハハ」

「...で。一体この部屋に何をしに来たんだ?」

「え?それは在宅デート...」

「違うだろ。...何か計画があって来たんだろ」


私の言葉にお兄ちゃんはそう否定する。

その言葉に私は少しだけ考え込み。

そしてベッドに腰掛けた。

それからお兄ちゃんを見る。


「...嘘吐いてないんだけど実は...私、鬱っぽくてね」

「...そうなんだな」

「だからまあ...その。つまり...うん。鬱っぽい。最近、空をよく見上げてるんだ。多分だけど」

「...お前の友人の花奏ちゃんの事で悩んでいるのか」

「まあそうだね。...花奏ちゃんの過去...最悪だから」

「...そうだな。花奏ちゃん...イジメられていたそうだしな。それも...最低最悪で」

「アハハ。そうだね」

「...お前は偉いよな。...そういう面倒見の良い所とか」

「私はあくまでお兄ちゃんに教わった事を繰り返しているだけ。...ただそれだけだから。ずっとそれだけ」


花奏ちゃんというのは私の友人の女の子だ。

ただイジメが原因で...不登校気味になっている。

そして...彼女は痴漢行為を受けて精神病を患っている。

それ以外は何も分からないのだが。

私は聞けない。


「...花奏ちゃんは元気か」

「うん。元気だよ。...凄く元気だと思う」

「...花奏ちゃんの事で悩むのは良い事なのかもしれないけど。悩みすぎるなよ」

「有難う。お兄ちゃん」

「...俺はお前を助ける事は出来るが限界がある。だからこそお前が自らを守らないといけない所がある。...感情に呑まれるなよ」


私はお兄ちゃんからそう忠告を受けながら頷く。

それから私は胸に手を添える。

そして考え込んでいるとお兄ちゃんは目の前を見た。

立ち上がるお兄ちゃん。


「...お前には存分に助けられたからな」

「お兄ちゃん?」

「...だから俺がお前を助ける番だ」

「お兄ちゃん...」


赤くなりながら私はお兄ちゃんを見る。

するとお兄ちゃんは私を見てから笑みを浮かべる。

それから声をかけてきた。


「ゲームでもしないか。気分転換に」

「...あ、そうだね。気分転換だね」

「ああ。気分転換にな。これはデートなんだろ?」

「うん。デートだよ。だから恋人らしい事をしようよ」

「まあな。だけど俺はお前と付き合うとは一言も言ってない」

「えへへ。私はその気だけど」


それから私達はそのままゲームをしていると。

1時間後ぐらいにインターフォンが鳴った。

?を浮かべながら私はインターフォンを覗く。

そして衝撃を受けた。



「...何の用事だ。...今更」

「お願い。誤解だけは解きたい。あくまで私は...浮気をしてないから」

「...はぁ...」


目の前に現れたその女。

つまり朧だったが。

俺に対して子犬の様な目線を向ける。

その顔に対して俺は無言になる。

それから俺は朧を静かに見据える。


「...まあ情けでお前の言い分を最後だけ聞いてやるよ。そしたらもう関わりを持ちたくない」

「そ...そうだね。...その...ぜ、全部説明すると...その」

「...何だ。早くしろ」

「...わ、私を寝取ったとされるのは女の子なの」

「そうか」


俺はその言葉に「...」となる。

それから俺は朧を見た。

どっちにせよ。


「...俺はお前が男だろうが女だろうがどんな奴に寝取られたとしても。ラブホに行ったのは事実だから。お前を許す気はない」

「そ、そうだね...うん」

「...何でそんな事をしたんだ」

「...それは...そうだね。...いえ、言えない」


そして沈黙する朧。

どうも思ったのと違う展開だった様だが。

俺にとってはどうでも良い。

そう思いながら俺は踵を返した。

それからドアを閉めようとした時。


「ま、待って。その。...晴人。私は...」

「...中身を言わないんだったら意味無いと思う。言い難い事だとは思うけど言わない限りは...まあ言っても同じだけどな」

「...」


言えない事情があるのだろうけど。

絶対に俺は許さん。

そう思いながら朧を見る。

朧は「...」となってから泣き始めた。


「...戻ろうか。星空」

「そうだね。お兄ちゃん」


そして俺はドアを閉めた。

それから俺はドアの向こうで考えていた。

そうしてから数秒経ってから歩き出す音がする。


「...ねえ。お兄ちゃん」

「ああ」

「あの人。朧...何だか脅されている様に見えるんだけど」

「...え?」

「いや。ゴメン。私、丁度、花奏ちゃんに接点があるからさ。そうふと思っただけだけどね」

「...」


脅されている?

誰に?そんな事をする意味は?

俺は考えながら考え込む星空を見る。


「...ありえないよ。星空。それは」

「まあそうだね...今までを考えると確かにね」

「...」


相手に脅されているのだろう。

そう思いながら俺は余計な事は考えない様にした。

それから俺はリビングに戻った。

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