〈9話〉大掃除


お腹を満たしたので、掃除をすることにしました。


「シア。お前掃除はできるか?」


「んあ!」


「おーけー。じゃあ外を頼むよ。俺は中をやる」


シアは最初に思っていたよりも結構優れた奴だった。俺が中の本を綺麗に本棚にまとめている間に外壁にびっしりと張り付いていた蔦を全て食べたのだ。


雑食にも程がある。


それにしても、前にここに住んでた魔女は何をどうやってここまでの汚部屋を完成させたのだろう。前世の俺のアパートも充分汚かったが、ここはその比じゃない。二階建てで、食糧庫となっている地下室があり面積はかなり広いが地下倉庫以外はどこも散らかっている。


午前中全てを床に散らばっていた本と瓶の整理に費やし、午後の全てを腐った薬草やらゴミやらの処理に費やしてやっと生活できるほどになった。


もっとも、建物自体がボロボロだからまだまだ家とは呼べないけど、、、


日が落ちかけて来た頃に掃除をやめ、ザリアが地下に置いていった魔石の使い方を何となくで理解した。地下の魔石のおかげで家の中は明るく闇に怯える心配もない。俺の体にも魔力が流れてれば掃除とか料理も楽だろうに。


あ、そろそろシアの様子を見に行こう。午後に一緒にご飯を食べたきり、あいつの姿を確認していない。


「シアー?どこ、、え?」


暗くなりかけた外に出て俺は絶句した。


外壁つたどころか汚れも完全に姿を消し、庭を占拠して屋根にまで届きそうな長さになっていた雑草は綺麗さっぱり姿を消していた。


「んあ!」


駆け寄ってきたシアは泥だらけの姿で俺の足に頬を擦り付ける。


「お前が全部綺麗にしたのか?」


「んあ!」


すごいスゴすぎる。俺なら3日はかかったであろう外の掃除をシアは1日でやり遂げた。お腹が膨れている様子を見るとほとんど全部食べたのだろう。食い意地がすごいやつだな。


ちなみに夜ご飯もしっかりと得体の知れないない生肉の塊を美味そうに食っていた。


━━━━━━━━━━━━━━


それから俺とシアは3日ほどかけて場所や分担を変えながら大掃除と修繕に励んだ。おかげで家の雨漏りも、すきま風の侵入経路もなくなり普通の家と遜色ないぐらいになった。


もちろん家の修繕をしたのはシアだ。


俺にそんな大工のような技術はないからな、、、


俺はキッチンの整理を頑張るので精一杯だ、、、


、、、なんで俺よりマンドラゴラの方が高スペックなんだよ!


いや待てよ、逆に何も無い俺に高スペックのマンドラゴラが相棒としていてくれるのはとてもありがたいことなのではないだろうか。


「シア、お前はずっと俺と一緒にいてくれるか?」


「んああ!」


夜ご飯の生肉を口いっぱいに頬張りながらシアは元気に答えた。


いつの間にか俺はシアに対する警戒心もなくなり(最初からそんなになかったが)本当に相棒のように思い始めていた。


「お前は良い奴だなあ。ほれ、わしゃわしゃしてやるからこっち来い」


そう言うとシアは俺の膝の上によじ登った。


いいぞぉ、今日は沢山わしゃわしゃしてやる。ほーれ。


わしゃわしゃわしゃわしゃやっわしゃ


「随分と仲良くなったようでなりよりね」


「そうだろう?俺とシアはもう一生の相棒だからな!」


ん、


誰!?


言語を話せる生物はこの家には俺しかいないはずなのに!!


咄嗟に声が聞こえた玄関の方を見ると、そこには1人の魔族の女が立っていた。深緑の長い髪を夜風で靡かせながら。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る