冷蔵庫サプライズ
愛彩
冷蔵庫サプライズ
『次お家に来る時、何が食べたい?』
『小籠包。たこ焼き機で作る焼き小籠包って知ってる?それが食べたいの。』
『調べてみたけど、ちょっと面倒くさそうだなあ。君の好きな餃子でいいかい?』
『うん。ありがとうね。楽しみにしてる。』
彼は、お料理が上手でした。
わたしよりも、うんと。
お誕生日に圧力鍋をプレゼントしたこともありましたし、それで作ってくれた角煮は本当に美味しかったです。
彼は、SNSをやっていませんでしたが、お料理の写真を撮っては、わたしに何を食べたか報告してくる様な男でした。
どれも美味しそうでした。
わたしは自分のためにそこまで手の込んだものは作れないわ、というお料理ばかりが並んでいました。
『お仕事お疲れ様。餃子焼いてくるね。』
『ありがとう。』
その日、彼はお休みだったので、全て準備をして私に餃子を振る舞ってくれました。
餃子は、わたしの大好物です。
人生最後の晩餐には、母の餃子を選びます。
料理上手の彼でさえも、母の餃子には敵いません。
母に餃子屋をやらないかとオファーし続けていますが、断られ続けています。
まあ、その話はまた今度。
『いただきます。』
『おいしい!』
『それは、良かった。』
餃子を堪能していると、彼が冷蔵庫の方へと向かい、
『じゃじゃ〜ん!』
その手には、沢山の小籠包たち。
『準備してくれたの?』
『そうだよ。食べたかったんでしょう。』
『うん、ありがとう。嬉しい。』
一人で黙々と餃子と小籠包を包んでくれていた姿を想像して、とても暖かい気持ちになりました。
その後、長いことわたしの携帯の待受画面は彼お手製の焼小籠包たちでした。
そしてとある年。
わたしの誕生日。
わたしリクエストのランチ、ケーキ屋さんへ行きました。
ディナーは、彼が予約してくれたフレンチ料理屋さんへ。
幸せな一日を過ごし、お家へ帰宅しました。
幸せな余韻に浸っていると、彼が冷蔵庫の方へと向かい、
『お誕生日おめでと〜う!』
その手には、手作りケーキが。
まさか、ケーキまで手作りしてくれるだなんて。
そこで疑問が一つ。
ケーキ屋さんに行ったのに、何故ケーキを手作りしてくれたんだろう、と。
わたしがケーキ屋さんをリクエストしたのは約束の二日前でした。
なんと彼は、前々からケーキを作ろうと思っていたらしく、二回も試作をしてくれたのだとか。
そして、二日前にわたしからケーキ屋のリクエストが...。
リクエストには応えつつ、折角試作したのですから、ケーキも作ってくれたそうです。
『でも、お腹いっぱいでしょう。持って帰って明日食べなね。』
持ち帰りの準備までしてくれました。
なんて優しいのでしょう。
その後、長いことわたしの携帯の待受画面は彼お手製のケーキでした。
彼は今でも、冷蔵庫の中に幸せなサプライズを仕込んでいるのでしょうか。
冷蔵庫から素敵なプレゼントを出してくる、あの時の嬉しそうな顔は、今でも忘れられません。
それでは。
冷蔵庫サプライズ 愛彩 @omoshiroikao
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ポタポタ/愛彩
★0 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
お皿洗い/愛彩
★0 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
鼻毛カッター/愛彩
★0 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
顔がお洒落/愛彩
★0 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
いちごパンティのお値段/愛彩
★0 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
お友達からお願いします/愛彩
★0 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます