第18話
「ここまで連れて来て悪いけど、出てってくれる?皆の収拾がつかなくなるからさ。」
なるべく優しい笑顔を向けて言ったつもりだけど、彼女は俯いたまま「すみません」と残し、部屋を出て行った。
藍が一瞬、彼女を引き留める様な素振りをしたから、僕がすかさず「や・め・ろ」と目で訴えかけた。ッと小さく舌打ちをした藍は、不服そうに皆の方に向き直る。
そもそも今日会合するって言ったのは藍だ。女連れ込むの禁止って決まり作ったのも藍。彼女の何に動揺してるのかは知らないけど、藍にはトップとしての立場ってもんを理解してもらわないと。
でも翼も泰地も晃大も、藍のあり得ない行動にちょっと不振がっている。
いつもは会合なんて興味なさげに聞いている翼は藍をガン見してるし、晃大はニヤニヤしているし、泰地のゲームをする手は止まっている。
藍のあの威圧的な空気に近寄れる女は知れている。男の扱いに慣れた年上の女ばかりだ。そして藍が選ぶ女なんてのは、その中でもさらに絞られる。
付き合いの長い僕でも、女といるのを見たのは3、4回。しかも選ぶなんていっても1日どころか半日限定で、無下な扱いしかしない。飽き性の晃大でも1週間は持つのに。
僕が皆に向けて、抗争の反省を生かした今後の方針を話す中、藍はずっとソワソワとしていた。
いつもの魔王の藍ではない。何をそんなに耐えているのか、両拳をぎゅっと握り、目を血走らせている。
もうお前はトイレ行け。
そんなこんなで、約1時間に及ぶ会合が終了する頃には、ぽつぽつと雨が降ってきていた。
「あ、ベランダにタオル干しっぱなし。」
窓を見て何気なく僕が呟けば、藍がまた不思議なことを聞いてきた。
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