第17話

というか彼女はどこか抜けているとは思ってはいたけど、さすがにこれは精神的な何かをわずらっているのかもしれない。



「はあ?ギャルゲーの女だあ?」



 ずっとスイッチライトでゲームをしていたオレンジ頭の泰地たいちが、ようやく僕らの方を見た。



 泰地はゲームばっかやってるから、そのギャルゲーっていうのにも詳しいのだろうか?



「泰地もやったことあるの?」


「ねーし。ギャルゲーなんてリアルで女作れねえようなモサい男が楽しむもんだろ。」



 泰地の言葉に被せるように咳払いをする藍。



「リアルで女作れないのは泰地もじゃないの?」


「るせー。俺は興味ないだけ。」



 泰地がまたゲームをし始めて、翼が壁にもたれ掛かりながら髪をかき上げた。



「···そこまでボロボロになって潜りこんでくる女なんていないだろ。さっさと追い出せよ、藍。」



「そうだよ~、ここがゲームの中とか言ってるあたり絶対ヤバイ女だって!」



 翼に便乗したのは、金髪の前髪をゴムで結んでいる晃大こうだいだ。



「あれか?電波系ってやつか?」



 ゲーム画面しか見ていない泰地が晃大に投げかけた。



「そうそう、きっと中二病的なアレだよ!」


「病的なアレだか何だか知らないけど、関係者以外に内部事情知られたらたまったもんじゃないだろ。」


 

 翼が彼女の方ではなく、藍を見て言った。部屋に入れといて何だけど、やっぱり今はまだ抗争の立て直しの大事な時期だ。翼の言う通りかもしれない。



「そうだね。自らゲームキャラとか公言するあたり、ちょっと気持ち悪いよね。」



 僕がはっきりそう言うと、彼女が悲しそうな顔で俯いてしまった。悪いけど変な女に執着されても困るから、さっさとここで切り離しておかないと。



 でも藍はなぜか僕に信じられない目つきでガン飛ばしている。



 いやもうお前のその不可解な反応は知らないよ。

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