第14話

「そんな、やめましょう、お2人とも。」



 ナイフが怖くないのか、堂々とナイフを持つ藍の手首に触れ、ナイフをしまわせようとする彼女。



 しかし手首を触れられた藍は、なぜか持っていたナイフを地面に落とした。



 彼女がその落ちたナイフをしゃがんで取り、シャッと片手で折り畳んでしまうと、藍に差し出す。



「はい。ナイフなんて人に向けては危ないですよ?」



 何でナイフのしまい方知ってるのかは置いといて、藍にそうやって上からモノを言うなんてどうかしている。特に女に諭されるほどイラ立ちを感じることはないだろう。



 今の今まで僕に向けていた怒りが彼女にいくのだから、怒りも倍になる。もしかしたら彼女、本当に殴られるのでは?



 でも藍は、視線が定まらないまま小さく頭を下げると、彼女からナイフを受け取った。



「···さんきゅ。」



 だから は??


 ねえ、何なのそれ。気持ち悪いよ。



 

「とりあえず、こいつは2階に連れてく。」


「はあ?!って部屋連れてくの??」


「···このまま黙って帰らせるわけにもいかねえだろ。」



 まあ、確かに。


 もし敵の女だったら、敵の居場所を尋問なり拷問なりして問い詰めないとダメだしね?




「歩けるか?」



 キッと鋭い目つきで、ぶっきらぼうに彼女に聞く藍。



「はい、大丈夫です。」


「階段あるから気をつけろよ。」


「ありがとうございます。」



 態度と声色はいつもの藍なのに、出てくる言葉が何か違う気がするのは何でだろう。

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