第10話

「あ、あのっ、髪の毛、痛いですっ。あっ」



 色素の薄い髪がさらりとなびく。



 眉を下げるその顔は、なんともエロ···いや艶めかしい雰囲気で藍を見上げていて、可愛いとか綺麗という言葉では表現できないほどの顔立ちをしている。



 肌は白く、目の下と唇の下にあるほくろが官能さを一層引き立てているようで、目元の下がり方と唇の厚さが絶妙なバランスを醸し出している。



 僕も色んな女を見てきたが、さすがに彼女の顔を見て声を失くしてしまった。



 いや、何をやってるのか僕は。これこそが油断だ。相手はいつ襲ってくるかわからない。



 ほら藍だって眉間にしわを寄せ、ひたすら彼女にガン飛ばして威嚇してるじゃないか!



 どうする藍?お前何度か女を殴ったこともあったよな?いや僕もだけど。


 でもしつこく寄ってくる女を容赦なく殴り飛ばしてた根性はさすがだと思ったよ。僕の場合、ただしつこく寄ってくるくらいなら脅すだけに留めておくからね。



 でも藍は彼女をしばし睨み続けた後、不思議な一言を言ったのを僕は聞き逃さなかった。



「···女神···」



 え、今なんて?女神??女神って言ったよね??



「何それ。」



 容赦なく秒で掘り下げる僕。



「あ"?」

「いや「あ"」じゃないよ「あ"」じゃ。今確実に"女神"って言ったよね?何"女神"って??」


「言うわけねーだろ。お前耳ん中死んでんじゃねえの。」



 耳ん中死んでるって表現はちょっと理解できない。

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