第9話
そうこうしていると、背後から重い声がのしかかる。
「···
「起きたのか、藍。」
藍の気配はいつも幽霊並だ。いきなり話し掛けられて、思わず女の手を強く踏んでしまった。一瞬「う」と唸ったように聞こえたが、まあ大したことないだろう。
「木の下敷きになってまで奇襲とかどこのアホだよ。遥斗、お前はちまちましすぎなんだよ。」
「でも昔、抗争後すぐに奇襲かけてきたどっかの馬鹿がいたでしょ?慎重にいかないと。」
藍が臆せず葉の中に足を踏み入れ、女の頭の真横スレスレに、足をズドンッと落とした。
「そうじゃねえよ。やるならとっとと踏み潰せっつてんっだよ。」
さすが藍。僕の腹黒さなんて掠れるくらいの無慈悲さだ。女にも容赦ないあたり、"魔王"と呼ばれているだけのことはある。
藍が適当に葉や枝を折り畳みナイフで切っていき、女の頭の周りを空けるとその前にしゃがんだ。
「···どこの女だ。
藍が女の後頭部の髪を掴み、彼女の顔を上げさせる。
「あっ、」
彼女が髪を上に引き上げられた痛みで出た声に、顔をしかめる藍。
なんていうか、やっぱりこの女は奇襲の一つに使われたのかもしれない。その声は色気を含んでいて、色仕掛けのようなもので油断させようとしているのかもしれないから。
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