第8話

木の根付いている周りはさらに草が長く生えていて、あまり近寄りたくない。



 緑の葉の方にいけば、一瞬干し柿のような渇いた甘さが漂った。



とその時だった。



「コホっコホっ」



 むせる女の声。バサっと葉を掻き分ける音がして、思わず威嚇する声が出る。



「···誰だ。出てこい。」



 猫に語りかける様な、優しいそれではない。ドスを利かせるような、普段の僕ではない声色で。きっとこれが"腹黒参謀"だと周りに言われている原因の一つでもあるだろう。



 でもその人物は、僕の声に臆することなく返してきた。




「あ、そこに誰かいらっしゃるのですか??」


「は?」


「お願いです!どうか、助けて下さい!」



 自分の声とは真逆の、柔らかい清声が聞こえてきた。



「おい···、誰か答えろ。」


「私は、山元織羽と申します!」


「何でこんなとこにいる。」


「木が、倒れてしまって!下敷きになってしまったんです!!」

 


 自分の声にビクともしない女に違和感を感じた僕は、声の方に近付き、葉と枝の間から見えた手を軽く踏んで言った。



「女が何でここにいるかを聞いている。ここは男子校だぞ。」


「え?···だ、だんし校?とは、何ですか??」


「まともに答えないとお前の手を踏み潰す。」



 女相手でも容赦がないと思われるかもしれないが、女を使った奇襲手段もあり得なくはないだろう。



 助けた瞬間襲ってくる可能性は十分だ。···いや、木の下敷きになってるというのはかなりあり得ないが。

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